総務省は5月25日、地方自治体が電子投票を導入する際の運用マニュアル「電子投票導入の手引き」を公表した。これまで10例ある国内の先行事例を参考にして、管理・運営上の留意点をまとめたもので、手引きは準備から選挙後までを6章(「実施に向けた準備」「候補者情報の作成と期日前投票」「投票」「開票」「選挙後」)に分け、それぞれのフェーズでの運用ポイントを解説している。

 電子投票は2002年2月1日に「電磁記録投票法(地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律」)」が施行されたことにより、地方自治体における選挙で実施が可能になった。過去に10自治体で実施されている。総務省ではこれまで、補助金制度や機器の技術条件の整備などの支援を行ってきたが、実際の運用面に関しては過去にまったく経験がないことなどから支援が手薄な状況だった。ようやく先行事例の経験が積み重なってきたこともあり、昨年から手引き書の作成に着手していた。

 今後の電子投票の課題としては、投票機器の信頼性の担保が挙げられる。実際、これまでに電子投票を実施した自治体のいくつかで投票機器に障害が発生している。2003年7月に岐阜県可児市で行われた電子投票による市議会議員選挙では、機器のシステム障害によって投票に影響が出たとして住民が選挙無効の訴訟を起こし、2005年3月に名古屋高等裁判所は「選挙無効」の判決を下している(可児市は上告中)。

 こうした障害が発生してるにもかかわらず、投票機器の技術指針は2002年2月に作られた「電子投票システムに関する技術的条件及び解説」以降改定されていない。しかも、ここで示されている基準には法的拘束力がない。また、総務省によると、これまでの電子投票を実施した自治体において、投票機器について事前に第三者機関によるシステム監査が行われた実績もないという。総務省では「認証制度の創設も含め、投票機器の信頼性の担保は今後の検討課題」としているが、今のところ具体的な検討はまだこれからという段階だ。(黒田隆明)