■和歌山県は2005年4月までに、全職員のパソコン4000台をシン・クライアント端末に切り替える。導入コストは約6億3000万円。第一の目的はセキュリティ強化だ。端末はこれまで使っていたパソコンをそのまま使用し、 2種類のICカードでシン・クライアント端末とパソコンとしてローカルで使う用途に切り替えることができる。(黒田隆明)

※ この記事は『日経BPガバメントテクノロジー』第7号(2005年4月1日発行)に掲載されたものです。


 「セキュリティポリシーの実施手順に沿って情報システムを運用・管理をしていくには、職員の研修・啓発だけでは限界がある。システム側での対応も必要です」——和歌山県企画部IT推進局情報システム課課長の柏原康文氏はこう語る。そして、和歌山県が「システム側での対応」として選択したのが、「全職員のパソコンをシン・クライアント化する」という方法だった。

 シン・クライアントとは、クライアント側ではキーボードやマウスによる入力と画面表示のみを行い、OSやアプリケーションの動作やデータの保存はサーバー側で行うシステムのこと。これなら、職員は手元のパソコンのハードディスクにデータを残せない。サーバー側でセキュリティ・レベルを一括管理することもできる。情報漏えいが起こりにくいシステムといえる。

地図・和歌山県

 しかも、和歌山県のシン・クライアント端末は、USBメモリーやCDRなど外部記憶メディアも使えない設定にしている。「もちろん、完璧なセキュリティ対策はありません。和歌山県のシン・クライアントにしても、データを電子メールに添付して外部に送ることはできます。とはいえ、(メールでデータを送ることは)制度で禁止していますし、端末は監視しているので抑止効果は十分あると考えています」(柏原氏)

 和歌山県では、約6億3000万円を掛けて県庁の全職員のパソコン約4000台すべてを、2004年度中にシン・クライアント端末に移行する(金額はサーバー、ICカードリーダー/ライター、5年間の保守など関連経費をすべて含めたもの)。