日立総合計画研究所・編

 納税者がパソコンなどでネットワークを経由して税金を“電子的に”申告し、支払うことを「電子納税」といいます。

 米国の内国歳入庁では、既に電子納税が導入されています。納税者はプッシュホン式の電話やインターネットに接続されたパソコンを使って申告を行い、クレジットカードで納税を済ませることができます。特に、納税者自身がコンピュータを利用して申告を行うケースが急増しており、2002年度の受付期間中には2001年度に比べて約38%多い、900万件の申告が納税者自身によってコンピュータで行われたと報告されています。

 税金の還付申告を行った場合には、還付申告が処理されたか、払い戻しは発送されたかなどの進捗状況をホームページ上で確認できるサービスも提供されています。

国税の一部の税目については2004年1月から運用開始を目指す

 国内でも、現在、国税の一部の税目については2004年1月の運用開始を目指し、財務省や国税庁を中心に電子納税制度の準備を進めています。電子納税の対象となる税金は、当面、個人の申告所得税と法人税、消費税です。納税者本人だけでなく税務代理の権限を有する税理士等も電子納税の仕組みを利用できる予定です。

 現在検討されている、国税の電子納税の流れは次の通りです。

■国税の電子納税の流れ
公開鍵暗号方式の仕組み図
国税庁の資料より作成)

 まず、納税者は、従来からの銀行窓口などでの納税と電子納税のいずれかを選択することができます。電子納税を希望する納税者は、事前に税務署に届出を行い、利用者識別番号と暗証番号を取得します。これは、電子納税を行う人が納税者本人であるかどうかを確認するためです。

 届出の手続きが完了した納税者は、税務当局のホームページにアクセスして、現在の申告書に準じた入力画面に税額などの必要事項を入力して電子申告を行います。申告などのデータを送信する際には、納税者本人から送信されたものであり、データの改ざんがないことを確認できるよう、電子署名および電子証明書を添付することになる見通しです。

 電子申告のデータを作成するためには専用のソフトウエアが必要になりますが、国税庁が準備したソフトウエアを利用する以外に、対応機能を持つ市販の税務・会計ソフトウエアを利用することも可能とする方向で検討が進められています。

 税金の支払いは、インターネット・バンキングやATM(現金自動預け払い機)に必要事項を入力して、自分の預金口座から引き落とすことで行うことができるようになります。

 このように、納税者は従来のように税務署や銀行窓口などに行かずに、事務所や家庭から申告や納税の手続きを済ませることができるようになります。また、申告書の処理時間の短縮とともに、処理中のミスの減少も期待されています。企業の場合、社内で電子的に作成した税務・会計データをそのまま申告に利用できるようになり、事務作業負担も軽くなると考えられます。行政部門としても、納税に関わる行政事務の負担の削減と業務効率の向上が期待できます。

 ただし、申告にあたって必要な領収書など、電子データによる送信が困難な添付書類は、別途郵送などにより提出することになっており、その電子化が今後の課題です。

 なお、地方税については地方税電子化推進協議会において検討が進められている段階であり、2002年度中に主な税目についてモデル・システムの開発及び実証実験が行われ、標準的なモデルシステムが地方自治体に提示される予定です。2003年度以降、可能な地方自治体からシステムの構築、運用が開始される見通しです。