■奈良県橿原市では、1999年11月1日から情報公開サービスを開始すると同時に、積極的にインターネットを活用している。公開請求の受付はもとより、公開文書の写しも請求者に電子メールで送付しているのだ。公開文書の写しを請求者に電子メールで送るサービスを行っているのは、全国で橿原市が初めてだ。(文:野々下裕子)


橿原市地図

 奈良県橿原市は、大和三山、飛鳥川など古代人の歌に多く詠まれ、文化財も数多く残る古い歴史の刻まれた町である。そして、インターネットを活用した情報公開という面では、実は最も進んだ一面を持つ町でもある。

 1998年6月に公布された「橿原市情報公開条例」に基づいて、橿原市では翌1999年からインターネットを利用した情報公開サービスを市民に提供している。インターネットから情報公開の請求を受け付けるサービスは他の自治体でも例があるが、公開文書の写しを電子メールに添付して請求者に送るサービスを行っているのは、全国でも橿原市だけだ()。

※ その後、沖縄県浦添市でも同様のサービスが開始された。
 (2003.5.15 編集部追記)

 「条例が公布された頃は、インターネット利用者はまだ少なかったのですが、近いうちに普及すると予想し、電子メールの対応も必須となると考えました」——サービスを始めた経緯について、橿原市総務部総務課情報公開室室長の藤岡孝氏はこう語る。

 「ほとんどの文書が紙ですし、その一部を塗りつぶさなければならない場合や、捺印があることを見せなければならないものもあるわけですが、スキャナーで紙の文書をPDFデータに加工し、添付ファイルとして(請求者に電子メールで)送付しています。この方法なら窓口で渡す場合と同じように文書を公開できます」(藤岡氏)。

橿原市のサイトにある公開請求フォーム

橿原市のサイトにある情報公開請求フォーム。同市の情報公開全般についてはこちら

 文書をスキャニングするのも情報公開室の仕事だ。スキャナーは廉価な一般的なものを使用。ソフトウエアも、電子メールソフトやブラウザをはじめ、文書作成、PDF作成ソフトなど、すべて市販製品を使っている。つまり、この制度を立ち上げるためのコストはほとんど掛かっていない。

 橿原市の情報公開請求は年に130~150件程度。そのうち電子メールによる件数は年々増えているものの、多くて20数件程度だ。「今まで提供してこなかった、真新しいサービスですので、当初、利用者が増えるのではないかと予想していましたが、全体の請求件数も含めて大きな影響はありませんでした」と藤岡氏。情報公開業務の担当者は、室長である藤岡氏と同室の係長である山崎貴浩氏の2人のみで、窓口と電子メールでの公開請求すべてに対応している。