■山梨県では、2003年3月26日サイトリニューアルに合わせて、膨大な量にふくれ上がったウェブサイトのページをデータベースで管理することにした。ユーザーは情報検索が容易になるなど、アクセシビリティが向上した。システムは将来の業者変更などを見越して、OSのLinuxをはじめオープンソース・ソフトを取り入れたこと、さらに、Webサービスによる市町村との情報交換までを視野に入れたシステムとしたことでも注目を集めている。(文:渡邉利和)
【山梨県】
サイトのコンテンツをデータベースで管理
オープンソースでシステム構築、市町村とデータ交換も
山梨県のサイト。トップページには連日最新のニュースが更新されている。 |
今回、山梨県がサイトのシステム更新に踏み切ったそもそものきっかけは、増え続ける県のサイトのコンテンツを管理する必要が出てきたためだ。「HTMLファイルベースで2万ページ分以上になっていました。しかも、日々増え続けています。これだけの分量のコンテンツを、適切に管理していくためには到底人力では追いつきません」──山梨県企画部広聴広報課の丸山孝主任は、リニューアル前の状況をこう説明する。
山梨県がウェブで発信する各種ニュースは、平均すると1日に約6本程度、多い日には20本程度になるという。各ニュースはそれぞれ様々な要素が含まれているので、県のサイトの適切な関連ページからニュースページへのリンクを張るとなると大変な作業になってくる。手作業で関連情報にリンクを張ったり、公開期限が過ぎた情報を新しいものに入れ替えたりといった作業は、限界にきていた。このままでは、サイトの更新頻度や利便性に支障をきたすおそれがある。効率の良いコンテンツ管理システムを導入し、サイトをリニューアルする必要が出てきたのだ。
山梨県 |
そこで、2003年4月から新しくなった山梨県のウェブサイトでは、データ管理にXML(eXtensible Markup Language)を元にしたニュース記事管理用のフォーマット「NewsML」を採用した。NewsMLはロイターが発案、国際新聞電気通信評議会 (IPTC)が発表したフォーマットで、テキスト、写真、音声、動画などのマルチメディア素材の配信や管理に適していること、決められた形で属性情報を付けることでニュースの分類などが容易になることが特徴だ。これなら、コンテンツ管理も容易に行うことができる。山梨県では、まずはサイトに掲載されるニュースの部分(「県内ニュース」や「お知らせ・ご案内」の情報など)についてコンテンツのデータベース化を行なっている。
新しく導入したコンテンツ管理システムでは、入力されたニュース原稿はNewsML形式で保存されるとともに、タイトルや検索のためのキーワード、ウェブ上のどこにいつまで掲載するか、といった情報をデータベースに格納し、データベース上のデータとNewsMLのファイルを関連付けることで、コンテンツ管理機能を実現している。
職員用のニュース入力画面。操作は簡単だ。 |
この新システムによって、情報を発信をすること自体もスムーズになった。サイトで公開するニュース情報の入力は、ウェブブラウザーを介したフォームインタフェースを利用する。情報発信元となる各課の担当者の作業としては、ニュースの文書を張り付けてフォームの空欄を埋めるだけという簡単なものだ。
その結果、リニューアル後は各課から発信される情報量が増加するという効果も生まれたという。情報量のデータこそ取っていないものの、サイト担当者の実感として、明らかに情報量は増えていると丸山氏は言う。「ページの見栄えの良さにはさほどこだわってはいませんが、正確な情報が迅速に掲載される、ということは極めて重要だと考えており、各課にもその方針に沿った対応をお願いしています。新システムでは各課で入力した情報がすぐに公開されるようになったためか、各課でも従来以上に積極的に情報を提供するようになってきています」(丸山氏)。
官庁や自治体は現在、競い合うように情報公開の取り組みを強化している。山梨県の場合、情報公開作業を容易にして敷居を下げるステムの導入が、“意識”を高める結果にもつながり、さらなる情報公開を後押しするという良い循環が生まれていると言えそうだ。