日立総合計画研究所・編

 近年、累積財政赤字の拡大などを背景に、多くの先進国において、政府/地方自治体のアカウンタビリティ(accountability)が重視されるようになってきています。

 アカウンタビリティとは、力や権限、財を一方が他方に付託することによって、付託された側が付託した側に対して負う責任のことです。この考え方を政府/地方自治体に当てはめると、国民が政府/地方自治体に行政権を付託し税金を支払うことで、政府/地方自治体は国民に対して公益を実現する責任を負う、という関係になります。

 厳密に言えば、アカウンタビリティは「結果責任」と「説明責任」から構成されています。政府/地方自治体が果たすべきアカウンタビリティとは、(1)政府/地方自治体が合法的かつ合理的に公益を実現するための政策や施策を実行し、求められる結果を達成する責任(結果責任)と、(2)政府/地方自治体が政策や施策の策定・実施の過程や、その内容、結果などについて情報を公開し説明する責任(説明責任)の2つになります。この「結果責任」と「説明責任」を遂行して初めて、政府/地方自治体はアカウンタビリティを果たしたと言えます。

■政府・地方自治体のアカウンタビリティとは
政府地方自治体のアカウンタビリティとは

 電子政府/電子自治体は、政府/地方自治体がアカウンタビリティをより良く果たすための手段として有効です。例えば、2003年4月に米国で行われた世論調査でも、「電子政府の最大の利点は何か」という問いに対し、「電子政府によって、政府は国民に対してよりよくアカウンタビリティを果たすことができるようになった」という回答が最も多く、回答者の28%となりました(The Council for Excellence in Government「The New e-Government Equation: Ease, Engagement, Privacy and Protection」)。

 具体的には、ITを活用して政府/地方自治体が業務効率や住民に対するサービスの質を向上することを通じて、政府/地方自治体は「結果責任」を果たすことができます。現在、米国では、ブッシュ政権の「電子政府戦略(E-Government Strategy)」に基づいて、連邦政府の省庁の壁を越えて、重複業務の統合と関連データの共有を進め、政府内業務の抜本的に効率化しようとする試みが進められています。日本でも2003年7月に決定された「e-Japan戦略II」において、業務委託や既存制度の抜本的な見直しによって業務効率向上をはかり、財政支出を抑制することが目標として掲げられ、取り組みが進められることになっています。こうした取り組みは、政府/地方自治体が「結果責任」を果たすことに寄与するものと評価できます。

 「説明責任」を果たすという面においては、自治体がホームページなどを通じて、より多くの情報を使いやすい形で提供することで、透明性を高めることが可能になります。特に米国では、1966年に情報自由化法(FOIA: Freedom of Information Act)が施行されていましたが、インターネットの普及に伴い、この法律が改正され、電子情報自由化法(eFOIA)となりました。この法律では、一部例外を除き、1996年11月以降に各省庁で作成された情報は1年以内にインターネットなどの電子媒体で公表することが義務付けられました。こうした取り組みによって、電子政府は、米国連邦政府の透明性を向上し、「説明責任」を果たすことに役立っていると言えます。

 このように電子政府/電子自治体は、政府/地方自治体がより良くアカウンタビリティを果たすための強力な手段といえますが、ITを導入すればアカウンタビリティが果たされるというわけではなく、あくまでも、政府/地方自治体が、業務効率化やサービス向上、情報公開を進めるという方針を明確化し、業務改革や法律・制度整備とともにIT活用を進めていくことが重要です。