■「ともだち」関係の連鎖が穏やかなコミュニティを築く
2003年4月に地域ポータルとしてオープンした「ごろっとやっちろ」では、当初から会員同士が趣味の「サークル」を作ったり、掲示板で意見や情報を交換したりなど、グループウエア的な使い方ができるコミュニケーション・ツールを提供してきた。
「2002年7月ごろに、市のホームページのリニューアルに向けて検討委員会を立ち上げました。その中で地域密着型のコミュニティサイトも作ろうという話が出たのです」(八代市役所企画財政部企画調整課広報広聴室の友田善之主任)。検討委員会では、地域の情報を提供したり、地域住民の意見も募集したいという声が集まった。そこで公式サイトとは別にポータルサイト「ごろっとやっちろ」を開設することになったのである。
しかし、コミュニティ機能はうまく活用されなかった。次第に掲示板などへの書き込みは少なくなっていった。その原因を小林氏は「会員同士の“疎”な関係にある」と、独特な言い回しで分析する。会員にコミュニケーション・ツールを使ってもらうには「もっと“他者とのつながり感”を感じられる仕組みが必要だと思いました。それにはSNSの機能が効果的だと思いました」(小林氏)。
ここで言うSNSの機能とは、主に「プロフィール」と「ともだち」機能のことだ。
「プロフィール」は、本名や住所、出身地、年齢、生年月日、性別、血液型、趣味、職業といった情報を登録して公開できる機能だ。会員登録段階では本名、住所、性別は登録するが、「ごろっとやっちろ」に表示するためのプロフィールは登録しなくてもいい。公開用のプロフィールを登録した場合は本名、性別、年齢など各属性ごとに、「すべてのメンバー」か「ともだち限定」のどちらかを表示指定できる。会員は個人情報をコントロールして、見せたい相手にだけプロフィールを見せることができる。
「自分の個人情報を知られたくないという人が多いと言われますが、プロフィール機能を提供したところ、プロフィールを書きたがる人も少なくありませんでした」(小林氏)といった現象が起きているという。SNSのような安心できる環境なら、自分のことを相手に知ってもらいたいと思う人は多い、ということだろう。
■「ごろっとやっちろ」の主な機能回覧板 | 「ともだち」同士で連絡を取り合う回覧板を送信できる |
サークル | 趣味や目的別のサークルを作ることができる |
がんがん | 画像をパソコンや携帯電話から送信してページに掲載できる |
ごろっとページWIKI | 簡単にWebページを作成して公開できるツール |
カレンダー | 日時や内容だけでなく、場所の地図も登録できる予定表 |
相談室 | Q&A形式で質問や相談を投げかけたり、質問に回答できる |
掲示板 | 様々なテーマで議論や情報交換ができる掲示板を自由に開設できる |
リンク | カテゴリー別におすすめサイトを紹介する。自由に投稿できる |
地図 | 八代市の地図を見ることができる。会合の場所を知らせるといった用途にも使える |
プロフィール | 本名や出身地、年齢、性別、趣味などの情報を登録できる |
日記 | 自分の日記を書くことができる |
■登録画面
サイト上では匿名でもOKだが、登録時には住所、本名などを記入する。 |
■プロフィール
会員は自分のプロフィールを編集して表示できる(非表示も可) |
■サークル
趣味や目的別に会員が自由に作ることができる。参加者を制限することも可能。 |
■掲示板
一般公開の掲示板のほか、会員専用(「ともだち」や「サークル」限定)の掲示板も。 |
「ともだち」機能は、元々の知り合いやサイト上で知り合った人と相互登録する機能で、コミュニケーションを深める役割を果たす。
例えば、AさんとBさん、BさんとCさんはそれぞれ「ともだち」だが、AさんとCさんは「ともだち」ではないとする。ここでAさんがCさんのプロフィールを見てみたところ、自分と同じ趣味を持っていたとしよう。Aさんは「趣味が私と同じで、しかもBさんの『ともだち』なら、Cさんと仲良くなれるかも」と思い、Cさんに「ともだち」になりませんか、とメッセージを送る……。こんな形で「ともだち」のネットワークが広がっていくのである。
もう一つ例を挙げてみよう。「ごろっとやっちろ」には、日記機能がある。「ともだち」のだれかが日記を書くと、その「ともだち」の日記の更新情報が自分のページにも表示されるようになっている。これなら、普段から顔を合わせていなくても「ともだち」の近況が分かるので“つながり感”が生まれる。また、「ともだち」が増えるほど、「ともだち」のうちのだれかが書いた日記の更新情報がいつも表示されているような状態にもなる。
こうして会員はネットワークの広がりを感じることができ、毎日でも訪れてみたくなる─ このような良循環が生まれるのである。