日立総合計画研究所・編

 「u-Japan(ユビキタスネット・ジャパン)」とは、総務省が2004年12月に策定したIT政策です。総務省ではu-Japanを、IT戦略本部が策定したe-Japan戦略の後継として位置付けています。e-Japan戦略に沿って我が国のIT化が進む中、その期限である2005年末が迫りつつあります。

 2001年に策定された我が国最初のIT国家戦略であるe-Japan戦略では、「2005年に世界最先端のIT国家になる」という目標が掲げられました。e-Japan戦略の策定を契機にネットワーク・インフラの整備は大きく進展し、その後、IT戦略本部は2003年にe-Japan戦略IIを策定し、国民に身近な分野でITサービスの利活用を促進するという新たな方向性を打ち出しました。

 u-Japanでは、e-Japan戦略で整備されたネットワーク・インフラやITサービスをさらに発展させ、2010年を目標に日本を世界最先端の「ユビキタスネット社会」へと発展させていくことを目指しています。ユビキタスネットワーク社会とは、誰もが、いつでも、どこでも、ネットワークを利用してサービスを受けたり、情報をやり取りしたりできる社会のことを意味します。

 連続しているように見えるe-Japan戦略とu-Japanですが、その策定母体が違うという事情があります。e-Japan戦略は日本のIT政策をまとめるIT戦略本部が策定しましたが、u-Japanはあくまでも総務省が独自に策定した政策なので、総務省以外の府省が管轄している分野の政策については、他府省との協力が必要不可欠となります。今後はIT戦略本部の戦略とu-Japanとの整合性をいかに取るかが課題となるでしょう。

■四つの意味があるu-Japanの「u」

 u-Japan の内容についてもう少し詳しく説明しましょう。u-Japanの基本理念は、一つの「U」と三つの「U」から構成されます。一つの「U」は上記の「ユビキタス(Ubiquitous)」ですが、それ以外の三つの「U」は、「ユニバーサル(Universal)」と「ユーザー・オリエンティッド(User-Oriented)」、「ユニーク(Unique)」を意味します。

■u-Japanの基本理念を示す一つの「U」と三つの「U」
u-Japanの基本理念を示す一つの「U」と三つの「U」

 総務省は、2004年3月から「ユビキタスネット社会の実現に向けた政策懇談会」を開催し、民間の構成員を中心にユビキタスネット社会の実現方策について議論を行ってきました。同年12月には最終報告書を発表し、その中でu-Japanを実現するための政策として「u-Japan政策パッケージ」を発表しました。u-Japan政策パッケージは、(1)ユビキタスネットワーク整備、(2)ICT(Information & Communication Technology)利活用の高度化、(3)利用環境整備、という三つの柱からなります。これらの政策群の中には、総務省が従来から取り組んできた政策も多く含まれていますが、u-Japanとしてまとめることによって、今後のIT政策の方向性を国民に分かりやすく提示する狙いがあるようです。