地域情報化の政策提言や電子自治体実現の推進活動などを行うNPO法人の「デジタルコミュニティズ推進協議会」は2005年5月から、中小規模自治体へのCIO(最高情報責任者)補佐の派遣事業を開始する。既に、佐賀県多久市(人口約2万3000人)と長崎県新上五島町(約2万6000人)、千葉県浦安市(約15万3000人)の3市町が、デジタルコミュニティズ推進協議会からCIO補佐を受け入れる意向だ。浦安市はこの5月からCIO補佐を派遣してもらう。上記3市町では、主に情報システムの導入・運用費用の適正化や、業務改善などを推進する役割をCIO補佐が担う予定である。このほかにも、二つの自治体でCIO補佐派遣の利用を検討しているという。

 CIO補佐の派遣費用は月額50万円程度になる見込みだ(自治体庁舎への出張勤務は1カ月に1~2週間を想定)。「民間のITコンサルタントを利用すると年間で約2000万円掛かってしまう。中小自治体でも利用できる費用に設定したい」と、デジタルコミュニティズ推進協議会理事・事務局長の小島謙二氏は説明する。

 同協議会では、CIO補佐にITベンダーのOBを採用して人件費を抑制したり、同じ地域にある複数自治体で共通のCIO補佐を受け入れてもらい出張旅費を分散負担することで、派遣費用の低減を実現する考えだ。単独自治体からの依頼も受けるが、この場合、自治体側が負担するCIO補佐の出張旅費などが増えることになる。同協議会は、地域の共通課題の把握・解決や、近隣自治体と協力関係を構築することなどを提案できるとして、複数自治体が共通のCIO補佐の派遣を受けてくれるよう提案していく。

 デジタルコミュニティズ推進協議会は2005年5月までに、現在2人のCIO補佐を合計5人に増やす。さらに同年8月には派遣事務局本部を設置して、あらたなCIO補佐の採用・研修や、CIO補佐の業務を支援する体制を充実させる計画だ。

 派遣事業の本格展開に先立ち、デジタルコミュニティズ推進協議会は2004年10月から2005年1月まで、佐賀県多久市と長崎県新上五島町でCIO補佐派遣の検証事業を試行した。最終的に、CIO補佐と職員との協力関係の構築の仕方や、派遣コストの試算などを取りまとめ、本格的な事業化に踏み切った。

 多久市と新上五島町で行った検証事業では、派遣されたCIO補佐が、庁内のセキュリティ・ポリシーの見直しや、個人情報保護対策を強化したシステム運用の確立といった、情報セキュリティ分野の支援を行った。CIO補佐として、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)主任審査員の資格を持つ弁護士と、ITコンサルタントの計2人を派遣。2人がともに同行して、毎月1週間の期間、派遣先の各自治体に滞在し、問題解決に取り組んだ。助役がCIOとなりCIO補佐に権限を与え、情報化推進の委員会を庁内に設置し、全庁的に職員の意識を改革していく方法が功を奏したという。

 そのほか、デジタルコミュニティズ推進協議会は、学識経験者や国会議員、自治体関係者などの参加を募り「市民が主役の電子自治体を実現する会議」という組織を2005年5月をメドに立ち上げるとしている。CIO補佐派遣事業と連携させることで、IT調達の方法や自治体業務を改善するための参考事例などを蓄積し、最善策を協議していく予定だ。

(鈴木 淳史=日経BPガバメントテクノロジー)