地方自治体における調達改革のあり方を探る研究会「情報システム調達モデル研究会」(委員長:大山永昭・東京工業大学フロンティア創造共同研究センター情報系研究機能教授)が、2004年度の活動成果として「情報システム調達ガイドライン」を策定。4月中にも広く公開予定だ。

 地のガイドラインは、自治体が利用する情報システムに対する、企画から構築、運用といった一連の作業の基準や手順などを具体的に示したもの。情報システムのライフサイクル調達プロセス全体のWBS(Work Breakdown Structure;プロジェクト全体を細かい作業にグループ化した構成図)を示しているのが特徴だ。

 ガイドラインの公開方法は未定だが、まずは概要をWebで公開し入手を希望する自治体は事務局のニューメディア開発協会に申し込むという形を検討している。研究会では2005年度、このガイドラインをいくつかの自治体で実際に使ってもらい、その内容をチェックして精度を高めていく。

 情報システム調達モデル研究会は、ニューメディア開発協会が2003年11月に設立、5県3市(高知県、神奈川県、岐阜県、岡山県、福岡県、神奈川県横須賀市、神戸市、沖縄県浦添市)が参加し、情報システム調達のあり方について実証的に研究を進めてきた。

 今回のガイドラインは高知県が2003年3月に策定した「情報システム調達ガイドブック」を元に作成した。高知県では、企画から構築、運用といった一連の作業の基準や手順などを具体的に示した文書だ。これをベースに作業を進めることによって、根拠の弱い見積もりや見込みの甘い計画などを排し、適切なコストで、所望の情報システムを構築、運用できるようにすることを目的にガイドブックを策定、運用している。ガイドブックは、「戦略企画」「基本計画立案」「予算」「ライフサイクル調達の執行計画」「調達」「運用と保守」などの各フェーズごとの留意点で構成される。

 研究会のオブザーバーを務める経済産業省商務情報政策局情報政策課の三島由佳課長補佐は「高知県のガイドブックは、あくまでも高知県の組織体を前提としたものだった。これを、どこの自治体でも使えるような形に普遍化した。各自治体は部分的に活用したり、自分たちの組織に合うようにカスタマイズして使うこともできる」と、今回のガイドラインについて説明する。

 研究会ではそのほか、先進自治体の事例研究を中心として情報システム部門の役割についてまとめた「ITガバナンスの組織体制」についての報告書、情報システム調達適正化のための人材育成の現況や必要なスキルについての提言などをまとめた「人材育成」についての報告書も公表する。

(黒田隆明)