総務省が、Webアクセシビリティ(高齢者や障害者でも容易に情報を得られるようにすること)に関する自治体での対策状況について調査を行い、「公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会」(第4回、3月30日開催)で結果を公表した。それによると、Webアクセシビリティの確保のために「既に十分に取り組んでいる」と回答した自治体の割合は、わずか2.6%にとどまった。WebアクセシビリティのJIS規格である、JIS X 8341-3(ウェブコンテンツJIS)の「内容を知っている」と回答した自治体の割合も28.8%と低い結果となった。

■Webアクセシビリティの確保の取組状況 ■JIS X 8341-3(ウェブコンテンツJIS)の認知度
Webアクセシビリティの確保の取組状況 JIS X 8341-3(ウェブコンテンツJIS)の認知度

 自治体の規模別にWebアクセシビリティ確保の取組状況を見ると、Webアクセシビリティの確保に「既に十分に取り組んでいる」と回答した割合は、「都道府県」で11.1%、「人口10万人以上」の自治体が8.1%だった。さらに規模が小さくなると、「5万人以上10万人未満」では1.7%、「1万人以上5万人未満」では2.2%、「5000人以上1万人未満」では0.4%、「5000人未満」では0.7%とさらに低迷する。

 ただし、大規模自治体ではWebアクセシビリティへの取り組みは進みつつある。Webアクセシビリティに「既に十分に取り組んでいる」との回答に加え、現状で何らかの対策をしているが「不十分であり今後取り組みを進める」という回答も含めた割合の合計は、「都道府県」で97.2%と最も高く、次いで「人口10万人以上」の自治体が86.6%、「5万人以上10万人未満」では71.5%にのぼった。しかし一転して、「1万人以上5万人未満」の自治体では36.7%、「5000人以上1万人未満」では18.6%、「5000人未満」では15.4%と、急激に割合が減少する。規模の大きい自治体ほどWebアクセシビリティ対策を講じているが、逆に規模の小さい自治体では対応が遅れていることがはっきりと数字に表れた。

 JIS X 8341-3(ウェブコンテンツJIS)の認知度でも自治体の規模により大きな差が生じた。「内容を知っている」と答えたのは、「都道府県」では100%、「人口10万人以上」の自治体では73.3%、「5万人以上10万人未満」では49.1%だった。一方、「1万人以上5万人未満」の自治体では21.3%、「5000人以上1万人未満」では10.3%、「5000人未満」では8.0%と落ち込む。

 大規模自治体に比べて、予算や人材が限られる小規模自治体からは、Webアクセシビリティ対応をするうえでの問題点として「優先度が低く予算等が配分されない」と「所管部署が明確でない」と回答する割合が高かった。研究会の出席者からは「小規模の自治体では、複数団体で勉強するなどの協力関係を構築して取り組む必要があるのではないか」といった意見があがった。

 また、「国等に期待する支援」について尋ねた設問では、自治体規模にかかわらず、「点検ツールや作成支援ツールの紹介」(全体平均で54.2%)と「デザインテンプレートの整備」(全体平均で48.0%)を望む回答が上位2項目を占めた。

 Webサイトのコンテンツの管理を効率化するCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の導入については、「全庁的に導入している」または「一部で導入している」と回答した割合の合計は、全体で32.7%と低かった。ただし、都道府県のみで見ると、「全庁的に導入している」と「一部で導入している」とを合わせた割合は63.7%もあり、唯一過半数を超えている。一方、市町村での導入は軒並み低く、「人口10万人以上」の自治体では40.6%、「5万人以上10万人未満」の自治体では47.3%、「1万人以上5万人未満」では30.9%、「5000人以上1万人未満」では25.3%、「5000人未満」では23.8%と、いずれも過半数を下回った。

 調査は、自治体のWebサイトの企画・運用担当者に対して実施し、都道府県と市町村の計1215団体から有効回答を得た。回答した都道府県と市町村の規模別の構成割合は、全自治体の規模別構成の割合から大きく外れないように配慮してある。調査結果の詳細は、4月上旬に総務省のWebサイトに掲載する。

(鈴木淳史=日経BPガバメントテクノロジー)