サイトの使い勝手を考えるとき、最初の重要な要素の一つになるのがTITLEタグだ。TITLEタグは、ページの内容を表わす要素の一つで、以下の5つの役割がある。
(1)ブラウザーのタイトルバーへの表示
(2)ブラウザーの「お気に入り(ブックマーク)」「履歴」への登録
(3)Windowsのタスクバーへの表示
(4)音声ブラウザーへの対応
(5)検索サイトへの対応(クローラー、スパイダーが巡回する際に参照する)
■TITLEタグの整備がリピーターを呼ぶ
利用者が「お気に入り」「ブックマーク」などに記録されたページを再び使うのは、最初に訪問してから時間がたった後だ。ページ内容は覚えていても、どこのサイトにあったのか、どんな見出しだったのかはうろ覚えなことが多い。ブラウザーのブックマーク機能などにはTITLEタグが反映されるので、ブックマークの内容(つまりTITLEタグで囲ったテキスト)を見て該当するコンテンツかどうか理解できないと、せっかくファンになりかけた利用者をみすみす逃してしまうことになる。これではもったいない。
検索サイトへの対応についてもTITLEタグの役割は大きい。目的の情報を探す際、検索サイトが利用される機会はますます増えてきた。検索サイトのクローラーは、TITLEタグの記述を参照することが多い。検索結果にもTITLEタグが提示される。各ページに適切なTITLEタグが付いていないと、検索サイトにヒットしても、そのサイトが利用者の目にとまることはない。
TITLEタグを設定するときの注意点は以下の5つだ。
(1)ページ内容を明確に示す
(2)そのページを開く際にクリックするリンク名、そのページの見出しと一貫性を持たせる
(3)できるだけ日本語にする
(4)すべてのページに極力異なるTITLEタグを設定する
(5)適度な文字数にする(15~20文字程度以内)
また、TITLEタグには、ページ見出しに匹敵する内容と、自治体名を入れたい。例えば、「公的個人認証サービス」というページタイトルより「××市/公的個人認証サービス」とした方が、利用者に分かりやすくなる。残念ながら、今回の上位5サイトでさえも、トップページ以外のTITLEタグには自治体名は入っていなかった。
■リンクはリンクだと分かるように
リンクがリンク先の内容をきちんと表さなければならないことは言うまでもない。補足説明もないまま、あいまいなリンク名を付けては、ターゲットとなる利用者を引き込むことはできない。
また、サイトにはたくさんのリンクがあるから、ビジターはクリックしたリンク先をすべて記憶することはできない。既にクリックしたリンク先と、まだクリックしていないリンク先を容易に判別できるようにしておくと、ユーザビリティは向上する。この項目を満たしていたサイトは2割弱に過ぎなかった。
ブラウザーのデフォルトの設定では、リンクタグで囲われたテキストや画像の枠の色は、クリック前がブルー、クリック後がパープルに変わる。利用者は、この色に慣れているので、ブルーのテキストリンクは、その存在に気付きやすい。リンク名のテキストは、できればデフォルトの設定のままで、クリック前後の文字色を変化させたい。
図右側の「国保情報」などはリンクのあるテキスト(右)だが、リンクのないテキスト(例えば図左表)と色が同じでは、見ただけでリンクがあるかどうか区別がつかない。 |
リンク名の文字色にサイト独自の色を使いたい場合には、ユーザビリティを考えるなら、クリック後の文字色はクリック前より少しあせた色に変化させるのがセオリーとなっている。クリック後に文字が褪色することで、利用者は「既に一度クリックした」ということを直感的に理解しやすくなるからだ。
デザインを優先させ、リンクカラーを変化させたくないという意向があるかもしれない。しかし、特に公共的な情報を提供するサイトでは、デザインよりもユーザビリティへの配慮を優先すべきだ。
リンクなし(上)、リンクあり (下)の画像ボタンのように、クリックの可否が区別できないと使い勝手は低下する。 |
画像のリンクボタンも、リンクがあることを明確にしなければならない。リンクのある画像とない画像とで、違いがはっきり分かるようにしたい。例えばリンクのある画像は縁取りが立体的に見えるように表現し、リンクのない画像は平面で表現するといった工夫で、使い勝手は大きく向上する。
サイトの使い勝手に関して解決すべき課題は山積している。サイト全体に以上のような配慮をして、ストレスなくサイトを使いやすくすることに、各自治体はもっと力を注ぐべきだろう。
筆者紹介 古賀雅隆(こが・まさたか) 日経BPコンサルティング調査第三部チーフコンサルタント。官公庁、企業のウェブサイトのユーザビリティ、アクセシビリティに関するコンサルティングを手掛けている。『ネット広告ソリューション』(日経BP社)、『戦略ウェブサイト構築法』(日経BP社)などインターネットの戦略的活用法についての書籍やCD-ROMの編集も担当。 |