■当初は1時間ごとに道路情報を更新

――収集・発信するのに苦労したのは、どのような情報ですか。

西巻(柏崎市) 柏崎市では、多くの情報が錯そうして入ってくるので、道路の状況を正確に地図に落とし込んで提供することが難しい状況でした。

 このため、市道の番号と通行止めの個所や舗道の陥没などの情報をまずはテキスト・データで掲載することにしたのですが、利用者からは「分かりにくい」という意見がかなりありました。ただ、電気通信業者や道路工事関係者からは、このデータだけでもありがたいという多くの声をもらいました。市道何号線といった文字情報でも関係者はすぐに把握できるからです。

 災害初期は1時間ごとに入ってきた情報を全部掲載していました。その後も、3時間ごとに情報収集して掲載情報を更新していました。

――国土交通省の北陸地方整備局や県の土木部が発信している道路の寸断状況などの情報は利用しましたか。

植木馨氏
柏崎市総合企画部
情報化総合戦略室主任
植木馨氏
山本和也氏
小千谷市企画財政課
企画係主査
山本和也氏

西巻(柏崎市) 市町村の場合は市道だけでなく、国交省からの国道の情報、県からの県道の情報すべてが必要になります。国や県の情報を取り込んでも、市道も含めると情報が一気に多くなり、実質的に担当者が国道と県道、市道の情報をテキスト・データでWebサイトに掲載するのが精一杯でした。市道などの情報を収集しつつ、別の職員が地図情報を整備するのも不可能なくらい余裕がない状況だったのです。

 電子地図などに情報を書き込んでWebサイトで公開するためには、効率的に地図に情報を落とし込み登録・表示できるシステムがあればよいと感じました。

植木馨(柏崎市総合企画部情報化総合戦略室主任) 日常的に利用している市道は住民としても迂(う)回路を想定しやすいですが、幹線道路である国道と県道は、通行止めの地点などが分からなければ、目的地にたどり着けない恐れがあります。国道と県道の情報は、できれば県でまとめてもらえると、市民は非常に助かると思います。

山本和也(小千谷市企画財政課企画係主査) 小千谷市では、道路の状況の把握に苦労しました。道路が寸断されていたので、小千谷市内から市外に出るルートも分かりませんでした。地震直後は電話がほとんど通じなかったので、道路情報を知るために災害対策本部に直接来た住民もいました。小千谷市内の道路を把握できても、小千谷市を出た場所の道路がどうなっているかという状況が全然分かりませんでした。

■近隣自治体同士が相互協力できる防災計画を

――最後に災害時の情報発信の体制について、今回のご経験を踏まえてのご意見をいただければと思います。

植木(柏崎市) 災害対策本部に情報を報告する用途では、あまりIT活用はできませんでした。例えば大雨のときに「川があふれてきた」と消防団から報告があっても、言葉での報告だけでは川が警戒水域を越えたと本部は判断できません。現地からデジタルカメラの写真が転送できれば、即座に避難勧告を出すかを判断できます。現場から本部への情報伝達手段としてのシステムや、運用ルールを考えていくべきだと思います。

市川(新潟県) 県の地域防災計画では、紙媒体で情報を公表する手順は明記されていますが、インターネットの特性を生かす形での手順は現状では白紙の状態です。

 インターネットであれば第一次発信者の情報をそのまま広く伝達でき、“伝言ゲーム”をする必要がないなどの特性を活かし、どの発信主体がどの情報を責任を持って提供するのか、相互にリンクはどう張るのか、地域防災計画上に明記すべきです。同時に、紙などの他の媒体の特性も併せて考慮し、これを契機に総合的に見直すことが大きな課題です。

西方(小千谷市) 災害時に県や市町村が共同で利用できる共通のCMSのようなシステムがあると効率化できるかもしれません。

西巻(柏崎市) 今回、被害の大きい小千谷市や長岡市、川口町、十日町市の役所に電話をしても連絡が取れないので、(比較的被害の少なかった)柏崎市役所に問い合わせが多数寄せられました。ただ、地震発生の2~3日後くらいまでは、隣市の我々も詳しい状況が分かりませんでした。複数自治体をまたぐ地域的なつながりを持った防災計画作りも重要です。

 小千谷市の情報発信を柏崎市が肩代わりすることも考えましたが、今回は「小千谷市はそんな提案に対応できるような状況じゃないだろう」との判断で申し入れは行いませんでした。しかし、あらかじめ近隣市町村との連携手順を決めておくことで、被害の少なかった近隣の市町村が、被災した市町村をバックアップできるのではないかと感じます。

市川(新潟県) 県庁に直下型地震が起きることを想定すれば、リスク分散を目的に、情報発信用のWebサーバーの相互バックアップを県外の自治体と検討する必要があります。被災時でも情報発信できる体制の確立を、さらに突きつめて考えなければいけないと思います。