シンガポールのASP/IDC Alliance Chapter(AAC)のケネス・リム部会長。AACはIT企業の団体Singapore infocomm Technology Federation(SiTF)の1部会。
 

 政府/自治体向けのASPサービスに関するノウハウやソフト資産を共有することで、日本と韓国、シンガポールのASP業界団体が協力することを決めた。協力するのは、ASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパン(ASPIC)と、Korea IT Rental Industry Association(KITRIA)、さらにSingapore infocomm Technology Federation(SiTF)のASP/IDC Alliance Chapter(AAC)の3団体。各団体には各国のIT関連企業が参加している。ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービスとは、ネットワークを介しソフトを利用した時間や処理数などで従量貸しするサービスである。

 各国のASP業界団体は、政府/自治体向けASP事業で実績を持つ分野が異なることから、それぞれの得意分野のソフトやノウハウを持ち寄り補完しあうことを狙っている。将来的には中国なども巻き込み、東アジアでのIT化促進を目指す。

 Korea IT Rental Industry Association(KITRIA)は、政府機関の韓国情報通信部と共同しての中小企業のIT導入支援で実績を持つ。KITRIAの上部組織である韓国情報通信産業協会(KAIT)を通じて、ASP方式で中規模企業向けにグループウエアやERP(統合業務パッケージ)ソフトの機能を提供している。「既に20万社が利用している。2004年には30万社に増える見込み」(KITRIAのブライアン・オー副会長)という。

 シンガポールのASP/IDC Alliance Chapter(AAC)は、税関業務などの貿易関連システム(TradeNet)で実績を持つ。AACのメンバーであるクリムゾンロジック社がASP方式でTradeNetを十数年にわたり運用。35の政府機関を結び、6000以上の業務手順を管理している。「シンガポールでは経由貨物に関するビジネスが産業の柱になっている。今後導入されるであろう原産地証明のASPサービスなどでは他国との協力が必須になる。ぜひ交流を強めたい」(AACのケネス・リム部会長)考えだ

 日本のASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパン(ASPIC)も、情報システムの外部委託に関するSLA(サービス・レベル契約)ガイドラインの策定などで総務省と協力した実績を持つ。これらのノウハウを翻訳して提供するとしている。

 こうした協力は、3カ国のASP業界団体が集まった「ASP Asia Meeting 2004 in Tokyo by ASP/IDC Alliance」(5月10日開催、今回で第4回目)で方向付けられた。ただし、具体的な達成時期や目標などは今後協議して決める。自国の事情や言語に合わせたソフトのカスタマイズなどといった課題は多い。

(鈴木淳史)