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米アクセンチュア
ガバメント業務グループ
最高責任者
マーティン・コール氏

 ITコンサルティング会社大手のアクセンチュアは、官公庁など公共団体向けのIT調達・契約手法「accenture Public Sector Value(PSV)モデル」の普及啓蒙活動を開始した。PSVモデルとは、いわゆる成果報酬型の調達・契約手法で、業務の重要度や到達目標などにより基準を取り決め、その基準以上の業務成果が達成できた場合、落札業者に対しシステム導入の実費に加え、さらに報酬対価を支払う。利益追求を目的とした民間企業向けの一般的な成功報酬型IT契約モデルを、米アクセンチュアが公共団体向けに最適化した。

 PSVモデルは、米アクセンチュアが2003年に発案し、2004年から10カ国35機関で試験導入され実際の業務に適用しながら改良を加えている。一例として、米国アリゾナ州政府の歳入庁では、納税者が自主的に納税した総額や、納税者による異議申立の件数などを成功報酬の算出基準として取り入れ運用中だ。別の公共団体では、警察や教育、郵便、社会保障、移民管理、国境管理などの分野で試験導入をしている。

 米アクセンチュアは2005年中に、試験導入の事例を基にまとめた改良版PSVモデルを、書籍の出版やWebサイトでの掲載といった形で公表する。アクセンチュア日本法人でも日本語に翻訳して公開する予定だ。

 米アクセンチュアのガバメント業務グループ最高責任者のマーティン・コール氏は「PSVモデルをオープンソースのように広く公開し、よりよいモデルに育て業界標準にしたい」と語る。アクセンチュアは同社が主導しPSVモデルを広めるのではなく、コミュニティ形式での普及展開を期待している。一方で、学究的側面でのPSVモデルの普及も進めており、PSVモデルの策定に協力した米英の学識者が勤める大学で、PSVモデルの教育を今年の秋から開始した。

 米アクセンチュアのマーティン・コール氏は、今回の来日で日本の官公庁に訪問しPSVモデルを紹介した。既にアクセンチュア日本法人では、「日本の官公庁が公表している統計資料などを基に、日本でのPSVモデル導入のシミュレーションを行い、日本での適用に備えている」(アクセンチュア日本法人の官公庁本部統括パートナーの武田安正氏)。一方で、日本の官公庁では業務にかかわる原価計算や評価が始まったばかりであり、「一足飛びに成果にまで踏み込んで成功報酬の基準を決めるのは難しい面がある」(武田氏)とも分析。日本での普及策を検討している。

(鈴木 淳史=日経BPガバメントテクノロジー)