ICT(Information and Communications Technology)、CIO(最高情報責任者)、電子政府をテーマとした「ITU/APEC/早稲田国際ワークショップ2004」が、11月21日から25日にかけて早稲田大学で開催された。

 主催は早稲田大学国際情報通信研究センター、国連ITU(国際電気通信連合)アジア太平洋CoE(センター・オブ・エクセレンス)、早稲田大学電子政府・自治体研究所、APEC(アジア太平洋経済協力会議)電子政府研究センター。

 最終日には海外専門家44人を含めた参加者の下「ワセダ声明」が採択された。声明には「APEC加盟国の電子政府イニシアチブに関するベンチマーク評価の実施」「各国に適応可能な、電子政府発展に寄与できるCIO育成モデルの開発」などが盛り込まれている。以下、「ワセダ声明」全文を掲載する。

ワセダ声明

ITU/ APEC/ 早稲田国際ワークショップ
(2004年11月21日-25日開催)

 当ワークショップは、2004年11月21日から25日まで開催され、バングラデッシュ、ブルネイ、カンボジア、中国、台湾、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、モルジブ、メキシコ、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ペルー、フィリピン、シンガポール、タイ、トゥバル、英国、米国、ベトナム、ITU(国際電気通信連合)、そしてPECC(太平洋経済協力委員会)から22カ国・2国際機関計74人の参加を得られた。我々、全参加者は、当ワークショップが成功裡に終了するにあたって、関係者各位、特に早稲田大学、APEC(アジア太平洋経済協力委員会)そしてITUのご尽力に、この場を借りて深謝申し上げたい。

 情報通信分野における人材育成、教育研修そして情報交換により、国際社会環境の向上のために、産官学が連携した素晴しい機会であった。

   我々は、特に、以下のテーマにおいて、最新のICT動向、進捗状況や課題についての各国、各組織の経験や知識を共有し、大変多くの成果を得られた。

  1. ITU加盟国、特にAPEC地域における情報通信・CIO(最高情報統括責任者)・電子政府のプロジェクトの実施
  2. e-APEC戦略の下、APEC電子政府イニシアチブの評価
  3. 2004年10月にメキシコで開催されたAPECハイレベル電子政府シンポジウムのフォローアップ評価
  4. 電子政府および情報通信の利活用における人材育成
  5. 横須賀市に代表される電子自治体イニシアチブの実施検証
  6. 3G(第3世代携帯電話)の最先端研究開発や、RFID、ICタグの活用例をはじめ、情報通信分野における コンテンツやアプリケーション、サービスについて
  7. 日本および韓国におけるユビキタス社会の進展について
  8. 新たなデジタル分野サービスや文化産業において、デジタル・出版・印刷分野の新技術開発及び適用
  9. YRP(横須賀リサーチパーク)情報通信関連の研究開発センターと大学とのクラスター協力
  10. 世界情報社会サミットの基本方針とアクションプラン、ITU開発局の活動、主に発展途上国における実施プログラムについて
 2003年バンコクAPECサミットでの声明の中でAPEC首脳達による助言にもあるように、あらゆる利害関係者と協力し、e-APEC戦略の実施も含めた重要議題について、「ブルネイ宣言」目標達成に向け加速させると共に、インターネットの効果的活用を実現する為に、勤労者のコンピュータスキルを向上させ、通信教育やICT能力養成をさらに推進させることへの支持の表明。

 さらに、ITを活用することによる多大は恩恵を鑑みれば、電子政府・CIO・モバイルビジネス振興などは、より良い社会システムと社会的厚生の増大をもたらすと考えられる。したがって、我々は、以下15項目の活動計画及び協議事項を提言したい。

  1. 電子政府実現イニシアチブの促進のため、国を超えた連携を促進し、強化する。そのためには、各APEC委員会へ電子政府に関する活動を協力して積極的に行うことを働きかける。
  2. 2005年3月、バンコクで開催予定の第31回APECTEL(APEC情報通信委員会)へ、電子政府タスクフォースの設置について提案する。横断的組織部会として、eSTG (eセキュリティ分科会)やBFSF(ビジネス円滑化分科会)、HRDSG(人材育成分科会)やDCSG(開発協力分科会)等の作業部会と協力し、国際的活動を展開する。
  3. APEC電子政府研究センターおいて、加盟国の電子政府イニシアチブに関するベンチマーク評価を行い、2005年3月のAPECTELバンコク会議に報告することを要望する。
  4. ITU早稲田共同CIO大学院プログラム」の設立を通し、IT分野の人材育成活動を強化する。
  5. 2004年9月、シンガポールで開催された第30回APECTEL(APEC情報通信委員会)で承認したAPECTEL支援プロジェクトを活用して、電子政府の発展に寄与できる各国に適応可能なCIO育成モデルの開発によって、新人材育成モジュールの作成およびその標準化を達成する。
  6. フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシアと日本(早稲田大学)との間で現在実施しているJICA-Netを活用した電子政府人材育成e-Universityプロジェクトのように、人材育成方法の向上のため、遠隔教育を継続的に推進する。
  7. 活発な連携と国際的CIOのネットワークを促進する為、各国に国家CIO協議会を設立するよう要望する。
  8. モバイル政府実現を促進し、電子政府の発展を助長する。iモードのようなモバイル・インターネット技術は、 G2C(行政と市民間)、G2B(商取引)、G2G(政府間取引)をはじめとする相互のやりとりを行える媒体として、充分に活用されるべきである。
  9. 9. 国連防災会議(2005年1月に神戸にて開催予定)の取り組み・成果を支持する。台風や洪水、地震などの自然災害の被害最小化や災害復興にITの活用を促進する。
  10. APEC情報通信大臣会議(2004年5月か6月にペルーにて開催予定)に、2010年までに全市民がインターネットへの接続を可能にするという「ブルネイ宣言」目標を達成するためにも、インターネットの普及、またデジタル・デバイドの解消を加速させるよう、具体的政策提言を推奨する。
  11. 2005年6月にベトナムで開催予定の4年に1度のITU国際通信開発会議のアジア地域予備会議の準備活動を支援する。
  12. 2005年11月、チュニジアで開催予定の第2回世界情報社会サミット(WSIS)への準備活動を支援する。
  13. 各国の国際競争力強化のため、最先端技術分野に適応できる人材再教育に優先順位を置くよう、官民両リーダーに奨励する。
  14. 2004年、APECサンティアゴ閣僚会議において報告されたe-APEC戦略の実施状況に関する進捗度評価を、毎年継続して行うよう、APECからPECCへ要望することを推奨する。
  15. 早稲田大学と国際機関が今後も、当ワークショップを共催するにあたり、技術情報の更新、情報や各々の経験の共有から参加者が恩恵を受けられるよう支援を行う。その結果、ITの充分な利活用を通して、国民生活の質の向上を目指し、更なる連携を深めていくものと信じる。
(黒田隆明)