高知県同県の大方町は、都市圏以外の雇用を促進するため、インターネットを介した遠隔就業(テレワーク)を進める意向を固めた。12月3日に行った実証実験の結果が良好だったことを受けての方針。高知県では財政再建に向け、県の業務の30~50%を外部委託する方針を打ち出しており、県庁所在地の高知市から約100km離れた大方町でのテレワーク実証を足がかりに都市圏以外にも委託を広め、地域の雇用も促進する。今後は、テレワークを実現できるブロードバンド環境の整備が課題となる。

 12月3日に実施した実験の内容は、(1)高知県の職員自らが行っている広報チラシ作成の民間委託と、(2)大方町へのSOHO事業者誘致のポータル・サイト「『大方へき~や』悠遊移住計画」に掲載するI/Uターン事例のコンテンツ作成の二つ。ともにテレビ会議機能を持つソフトウエアを用い、インターネットを介して制作担当者と発注者、事業統括者を結んで、リアルタイムに企画意図を伝えたり制作指示を出すことができた。

 今回の実験では、制作担当者/事業統括者をADSLまたは光ファイバーの高速回線でインターネットに接続したため、ほぼリアルタイムに音声や画像をやり取りできたという。前回10月に行った大方町議会議事録の電子データ化の実証実験では、速度が劣るISDN回線を用いたため、画像のやり取りに20秒ほど掛かってしまったが、この問題を解消できた。

 ただし、大方町でADSLを利用できるのは町の中心部から半径約2kmの範囲に限られるという問題が残る。大方町では、通信会社へブロードバンド・サービスの開始をはたらきかけたり、無線方式の通信インフラを整備することなどを検討している。2005年2月上旬までに、ブロードバンドが利用できる大方町の範囲を精査し、ブロードバンド環境整備を進める。

 実証実験として行った、大方町のSOHO誘致ポータルのコンテンツ作成では、NPO法人「とさはちきんねっと」の担当者が事業統括者となり、大方町がSOHO事業者へ提供予定の空き家を利用して、インターネットを介し隣接する高知県中村市の制作担当者(SOHO事業者)や高知市のデザイン会社に制作指示を出すなどした。発注者として、大方町や同町商工会議所などで構成する「大方町雇用促進協議会」も加わり製作意図などを伝えた。作成したコンテンツは2005年2月にポータル・サイトに掲載する。厚生労働省の「地域雇用機会増大促進支援事業」(プラス事業)の予算を主に利用した。人件費を含め全体額は約5100万円。

 一方、高知県のチラシ作成の民間委託では、大方町のNPO法人「砂浜美術館」が事業統括者となり、中村市の制作担当者(SOHO事業者)に県から発注する形で制作指示した。実際に制作したチラシ(県の業務委託推進のお知らせ)は、12月20日に県に納品する。県からの予算約15万円を利用した。

 テレビ会議などに利用したソフトには、富士通が現在開発中のコラボレーション・ツール「Direct Share」という製品を用いた。この製品は、インターネットを介してパソコンどうしを直接的に接続できるピア・ツー・ピア(P2P)ソフトで、制作ファイルの共有や更新の同期が容易にできるため、遠隔での共同作業に有効だったという。

(鈴木 淳史=日経BPガバメントテクノロジー)