身体障害者の支援活動を行うNPO法人「WeCAN!」は2005年2月から、主に自治体などの公共団体を対象にして、Webアクセシビリティ(高齢者や障害者でも容易に情報を得られる度合い)を向上させるWeb制作の受託事業を開始する。Web制作の実作業は、アクセシビリティ向上の研修を受けた身体障害者が担当し、営業活動をWeCAN!が担当する。

 現在、自治体や企業では、Webアクセシビリティの向上のため、Webサイトに表示する文字を拡大できるようにしたり、表示された文字を読み上げる機能がスムーズに働くようWebサイトの画面を再設計するといった対応を施している。2004年6月には標準的な指針となるウェブコンテンツJISが制定され、関連するWeb制作の需要拡大が見込まれている。

 WeCAN!が当面受託するのは、既存Webサイトのアクセシビリティの検証と、アクセシビリティを向上させるためのWebサイトの改変や継続した更新作業だ。WeCAN!のメンバー4人が営業担当者として活動し、企業からの要望も労働条件に応じて受託する。今後は個人事業者として営業代行を行うセールスレップも活用して営業範囲を広めていく予定だ。

 WeCAN!は、2004年9月から5人の障害者にアクセシビリティに関する研修を行っている。2005年2月に研修課程が終了することから、研修修了者への就業機会を発掘するため本事業を開始する。研修の実施は、WeCAN!と埼玉県が共同で2004年6月に開設した「首都圏テレワークセンター」(さいたま市)で行っている。2005年1月からは、さらに10人が研修を受けることになっており、WeCAN!は3年以内に200~300人に研修をしたいと考えている。WeCAN!では既に、アクセシビリティ対応のWebページとして情報通信研究機構(旧 通信・放送機構)の「情報バリアフリーのための情報提供サイト」を制作した実績を持ち、このノウハウを利用し研修を行っている。

 またWeCAN!は、通勤が困難な障害者でも在宅で作業ができるようにするため、パソコンとブロードバンド回線を利用した遠隔就業(テレワーク)の支援も並行して進めていく。自身も障害を持ち、車椅子を日常生活の移動手段とするWeCAN!理事長の上條一男氏は、「さいたま市の首都圏テレワークセンターで研修を受けた修了者が、居住地の近隣自治体のリーダーとしてさらに障害者を支援する体制を作っていく。一方で、WeCAN!が自治体などに対して、地域の活性化策の一環としてテレワークの活用を提案・営業していく」と語る。さらに「通勤できないために働きたくても働けない障害者が数多くいる。ぜひ支援したい」と続ける。

 WeCAN!は将来的に、このほかの事業も展開していく。具体的には、書類として保存してある記録を電子データ化する作業や、他の障害者支援団体と協力し障害者や高齢者にとって移動の障害となる街なかの段差や利用しづらい施設などを表示する電子マップの作成、などを受託していく考えだ。

(鈴木 淳史=日経BPガバメントテクノロジー)