防災対策本部の写真
荒川下流河川事務所に設置した防災対策本部

 国土交通省の荒川下流河川事務所は2005年1月17日に、「ITを活用した広域的な防災訓練」を実施した。主に荒川河川敷に敷設された国土交通省の光ファイバー網と商業用の衛星通信回線を使って、埼玉県川口市や東京都足立区、板橋区、葛飾区、北区などを結び、災害時の情報を共有し、被災者への情報提供や支援を実際に行った。

 荒川下流河川事務所が実施する防災訓練は通算5回目に当たる。今回初めての取り組みとして、行政間での「荒川流域市区共通の情報ポータルサイト開設による被災情報の共有」や「通信衛星を活用した情報収集」を行った。

 一方、被災者向けの情報配信として、CATVや通信衛星を経由し、東京・新宿の商業ビルが壁面に設置している大型ディスプレイや、駅に急設した大型テレビなどに対して、被災情報を送信・表示することも初めて試みた。また、ボランティアや住民の参加による試みでは、携帯電話を使っての、被災状況のインターネット掲示板への書き込みや安否情報の登録なども行われた。

 このほか、荒川下流河川事務所と自治体とのテレビ会議や、荒川対岸への船を使った帰宅困難者の移送、仮設救護所設置による救急医療活動なども、前回から引き続き実施した。

 荒川下流河川事務所では、防災訓練の総括として、初めて利用した商業用衛星通信回線がITのツールとして十分利用価値があることを挙げ、災害時の利用協定の締結を検討したいとした。一方、反省点として、荒川流域市区共通の情報ポータルサイトに一部の自治体から被災状況についての書き込みがなかったことを挙げた。今後、理由を調査するとともに、広域連携をさらに進めていく意向を示した。

 今回の防災訓練には、自治体として埼玉県と、東京都江戸川区、葛飾区、足立区、板橋区、北区、江東区、墨田区、埼玉県戸田市、川口市の1県2市7区が参加した。このほかにも、国土交通省の関連地方事務所や消防、警察、医療機関、鉄道会社、通信会社、放送局、小中学校、市民ボランティア団体などが多数参加した。

(鈴木 淳史=日経BPガバメントテクノロジー)