日立総合計画研究所・編

 近年、財政赤字の拡大に伴い、欧米で採用されているNPM(New Public Management)への関心が高まっています。

 NPMとは、民間の企業経営手法を応用した政府/行政部門の運営方法です。1990年代に入って欧米でNPMが導入された背景としては、1980年代に財政赤字が拡大したことや、当時の政府/行政部門の運営が非効率だったことが挙げられます。政府/行政部門の無駄な支出を抑え、利用者(住民や企業)にとって利便性の高い行政サービスを提供するために、コスト削減や顧客サービス向上を目的とした民間企業の経営手法が採用されたのです。

 NPMの基本的方針として次の三つを挙げることができます。第一に、結果主義の導入です。これは、従来の政府/行政部門が前年までの予算の確保に終始し、執行後の結果を顧みなかったことに対する反省に由来しています。NPMでは、明確な基準に基づき政府/行政部門の施策を評価することで結果主義への転換を進めます。

 第二に、市場メカニズムの活用です。行政サービスの担い手として民間企業の参入を促し、政府/行政部門のコストを削減することを目的とします。具体的にはある政策を、政策の形成部分と実施部分に分離し、実施部分については民営化やアウトソーシングによって市場メカニズムを積極的に導入します。

 そして、第三に、顧客中心主義です。政府/行政部門も民間企業にならって、住民や企業を行政サービスの顧客とみなし、顧客満足を追求するように改めます。以上、三つの基本方針のうち、どの点に重点を置くかは、導入している国によって異なるようです。

■欧米では行政評価/政策評価でNPMを定着

 欧米では通常、NPMを政府/行政部門の運営に定着させる手法として「行政評価/政策評価」を用いています。「行政評価/政策評価」を行う際のポイントは、三つあります。一つ目は、単に評価をして終わりではなく、その評価を次の予算や施策に反映させることです。二つ目は、行政評価/政策評価を実施する前に、政府/行政部門のビジョンを定めることと、定めたビジョン及びビジョンに基づく施策を評価することです。三つ目は、評価に当たって、住民や地域で活動するNPO(非営利組織)など、多様なプレイヤーの参加を促すことです。

 ビジョンや予算、評価を相関させ、行政評価/政策評価を効率よく実行するには、複数部門が保有する予算関連資料や統計を有効活用する必要があります。その有効活用の実現には、ITが欠かせません。異なる部門間の情報共有や迅速な統計処理を、ITで実現するのです。加えて、行政評価/政策評価への多様なプレイヤーの参加を促すためにも、ITを活用してより広く情報公開することも大切です。

 現在日本では、3254の地方自治体のうち14%に当たる465団体が行政評価/政策評価を導入しています(2003年7月末時点)。中央省庁だけでなく地方自治体においても、NPM定着のカギとなる行政評価/政策評価が浸透しつつあるのです。今後は、NPMの考えに基づいて行政評価をさらに効果的に活用していくことが必要になります。