日立総合計画研究所・編

 PDCAサイクルとは、計画(Plan)を実行(Do)し、評価(Check)して改善(Act)に結びつけ、その結果を次の計画に活かすプロセスのことです。欧米ではこの考え方を体系化したデミング博士(Dr. W. Edwards Deming)の名前をとって、デミングサイクルとも呼ばれています。

 PDCAサイクルの考え方は、民間企業が製品の品質向上や、経費削減などを検討する際に広く用いられてきました。一つのプロジェクトについて、計画から改善までのプロセスを継続することによって、より良い成果を上げることが期待できます(図)。そのプロセスは具体的には以下の通りとなります。

PDCAサイクルのイメージ

 PDCAサイクルの最大の特徴は、計画から改善に至るプロセスを、さらに次の計画に結びつけることにあります。近年、中央政府や地方自治体において、行政評価(政策評価)を導入する動きが多く、この行政評価はPDCAサイクルを念頭に置いて導入することで高い効果を得られると言えます(ただし、狭義の行政評価としてPDCAサイクルの「評価(Check)」段階のみを指すこともあります)。

 最近では国のIT戦略にもPDAサイクルを導入しようとしています。政府のIT戦略本部の評価専門調査会は、国のIT戦略である「e-Japan戦略」と「e-Japan戦略II」の進ちょくを評価し改善案を提言した中間報告(2004年3月)において、IT投資の成果を広く国民に還元するためにPDCAサイクルの確立が不可欠であると明言しています。実際にIT戦略本部の評価専門調査会は、同中間報告書の付属資料の中で、e-Japan戦略/同IIの重要施策28項目に対して現状分析や総合評価を公表しています。

 PDCAサイクルは、電子政府/電子自治体と二つの点で関係があります。第一に、行政評価などにおけるPDCAサイクルを確立するためには、電子政府/電子自治体で導入したITが不可欠だという点です。例えば、計画の段階では現状のデータを集めて分析し将来像のシミュレーションをしたり、評価の段階でも成果の数値から成功または失敗の要因を探したりする必要があります。こうしたPDCAサイクルでのデータ分析やシミュレーションを効果的に実施するため、ITを活用する必要があるのです。

 第二に、電子政府/電子自治体関連のプロジェクトを実施する際にPDCAサイクルを導入することの重要性が挙げられます。電子政府/電子自治体とは、庁内にパソコンを置き、ネットワークを敷設することではなく、住民や民間企業に低コストできめ細かい行政サービスを提供することが重要な目的の一つです。この目的に対して、現在の中央政府や地方自治体の電子政府/電子自治体の政策や施策が効果を挙げているかどうかについてPDCAサイクルを導入して継続的に評価する必要があります。