■利用者の半数がコンビニ/インターネットを利用

 現在、窓口受け付けも含めた、利用予約の抽選申し込みの全件数に対し、約半数がコンビニやインターネットからの申し込みである(図)。サービス開始から3カ月の間に、徐々に利用件数と割合が伸びている。

 このうちコンビニ店舗だけで見た抽選申し込みの件数は、窓口も含めた全件数の10%弱を占めるという。インターネットのホームページからの予約は全件数の約40%である。コンビニからの利用が少ないのは、利用できるコンビニ店舗が80店舗に限られているからだと足立区では分析する。

インターネットおよびコンビニを経由したスポーツ施設の抽選申し込み数 コンビニ店舗でスポーツ施設利用料の払い込み件数

 コンビニ店舗での支払いは、2003年12月段階で全体の6.7%にとどまっている(表)。だが、コンビニでの抽選申し込み件数がまだ10%弱であることからすると、妥当な結果といえよう。今後、コンビニ利用が増えれば、支払いも徐々に増えていくだろう。

 申請書/届出書の印刷は、婚姻届が多い。2003年10~12月の間に印刷された79件の申請書/届出書のうち、19件が婚姻届だった。

 申請書/届出書の中で婚姻届の比率が高いのは、わざわざ区役所に取りに出向く手間が省けるからだ。足立区教育委員会事務局の益子完治 生涯学習課長は、「窓口で即記入するのではなく、書類を持ち帰って相談や確認をする時間が必要な婚姻届の印刷が多いようです。予想した通りの結果でした」と語る。

コンビニ店舗での届出書 イベントなどの足立区の行政情報の閲覧件数

■行政サービスの合理化策としての期待も大きい

 コンビニで行政サービスを実施することで足立区は、住民の利便性向上に加え、区の業務の合理化も狙っている。今回のサービスは、行政自らが窓口を増やすのではなく、コンビニ店舗を区役所の窓口として利用している。しかも、休日や夜間でも住民に区役所のサービスを提供できる。足立区役所の出張所(区民事務所)18カ所に対し、区内にあるコンビニ店舗は、各社合計で約200カ所もあることに目をつけたのだ。

益子 生涯学習課長
  足立区教育委員会事務局の
益子完治 生涯学習課長
  長谷川 情報化推進室長
  足立区政策経営部の長谷川勝美
情報化推進室長

 足立区教育委員会事務局の益子 生涯学習課長は、「コンビニやインターネットでの予約サービスの開始は、行政のスリム化を狙う一環です。従来の方法では、抽選用はがきに書いてある内容を職員がパソコンにデータ入力し抽選する作業をしていました。こうした入力作業を省力化できます」と期待する。既に、スポーツ施設を管理する足立区生涯学習振興公社(非常勤を含め270人が勤務)は、新規採用を抑え2005年度までの3年間で100人の要員削減を目標にしている。

 実は、庁内の改革を検討しはじめた当時、足立区は区の人口に対する職員数の割合が高かった。こうした合理化の意識は、「効率化を意味する『職員数の割合の低さ』の順位が、東京23区で下位に位置していた」ことから発している(現在、足立区は住民約150人に対し職員が一人の割合。職員の割合の低さで23区内第1位に浮上した。23区の平均は、住民約100人に対して職員一人)。今後も職員数が減少しても住民サービスを低下させない解決策の一つとして、情報システムや民間企業の活用を足立区の構造改革戦略の中で取り上げている。2001年には「サービスアップ推進会議」を開き、コンビニを活用した住民サービス向上策を検討。足立区コンビニ活用検討委員会を設置し、2002年5月には「足立区は24時間サービス」と掲げたコンビニ利用の方針を打ちたてた。

 今回のシステム構築費用は約3000万円(2002年度および2003年度予算で計上)。セブン-イレブン側に支払う委託料や料金収納の手数料などは合計で年間約400万円になるという。この試算額は、足立区のサービスがセブン-イレブン・ジャパンの電子商取引サイト「セブンドリーム・ドットコム」の一商品として扱われているので、ECサイトの利用手数料などを基に算出したものである。足立区での2001年度のスポーツ施設予約件数は合計で8万件。そのうち30%がコンビニ店舗での利用に移行すると仮定した試算額が400万円だ。足立区政策経営部の長谷川勝美 情報化推進室長は、「24時間365日、80拠点で行政がサービスを提供することに比べれば、コンビニでのサービスはコスト安になっているはずです」と見ている。