■民間の人材の力を借りることで、合併のシステム構築費用の削減に取り組んだ自治体がある。2003年2月3日に、旧・新市町(人口約2万2000人)/旧・内海町(約3400人)との編入合併を終えた広島県福山市だ。ITコンサルタントと業務委託を結び、当初見積もりより約1億円のコスト削減に成功した。(文:鈴木淳史)

※ この記事は『日経BPガバメントテクノロジー』第3号(2004年4月1日発行)に掲載された記事を再構成したものです。

 

 広島県福山市で旧・新市町と旧・内海町との合併の議論が始まったのが2001年10月頃。翌2002年1月には法定の合併協議会を設置。同年2月8日に福山市の現場職員と情報政策課で電算統合部会を開き、システム統合の作業がスタートした。既に合併期日まで1年を切っていた。

 福山市(2003年2月3日に合併)
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【合併形式】編入合併
【人口】
40万7934人(2003年4月1日)
【面積】430.30km2
【関連旧市町村名】
福山市、内海町、新市町
【電算システムの統合】
福山市のシステムに統合
■合併によるシステム統合作業の概略
2002年7月末 システム設計完了
     10月末 プログラム開発完了
     12月末 プログラムのテスト稼働完了
     12月末 ~翌年年初 データ移行完了、システムの正常稼働を確認
2003年1月6日 システムの仮運用を開始
     1月中 新旧システムを並行稼働
     2月3日 合併

 限られた時間の中で福山市は、非常勤嘱託として市民病院でのシステム導入支援を2001年4月から行っていた中山章氏(アキュア・コンサルティング社長)に、合併に伴うシステム統合についての支援を依頼することにした(その後、合併関連の作業量増加に伴い、福山市では2002年7月に中山氏との契約を非常勤嘱託から業務委託に変更している)。

■あいまいな基準を排除しコストを大幅削減


中山章氏写真
 
アキュア・コンサルティング 代表取締役 中山章 氏

金属メーカーの情報システム子会社を経て1999年5月にアキュア・コンサルティングを設立。前職では主に生産管理システムの開発・運用を手掛けた。2001年10月にITコーディネータの資格を取得。2001年度から、前任者に代わって福山市の情報システム導入を支援。2002年5月から合併によるシステム統合作業支援も行う。

 合併期日が10カ月後に迫った2002年5月、福山市と中山氏は、システムのコスト見直しとプロジェクトの体制作りを並行して進めなければならなかった。

 コスト見直しを行わなければならなかったのは、受け取った福山市のシステム改修の見積額が問題となったからだ。当初ベンダーが提示して来た金額は約18億円。以前視察した新潟市に比べて2倍近い額だった。

 ベンダーからはシステムの違いなどの説明を受けたものの、新潟市と福山市では、編入する自治体からの移行データ量がほぼ同規模で、編入する自治体と同一ベンダーのシステムを利用している状況(福山市と新市町)なども似ていた。そのため、中山氏とも相談し、見積もりを精査することにしたのである。

 調査の結果、現場部門の担当者とベンダーが相談して加えた新機能の開発費用などが含まれていたことが分かった。これらの費用を削除し、システム開発費用を、当初の予算額である10億3000万円に抑えた。