■神奈川県相模原市は、デジタルカメラ付き携帯電話を利用して、住民から道路や標識の破損について通報を受けるシステムを稼働した。携帯電話で撮影した破損具合の画像と報告から、ある程度事前に状況を把握できるため、下見に行く手間が省け、補修を迅速に行えるようになった。将来的には、このシステムの仕組みをゴミの不法投棄対策や災害通報などにも利用することを検討している。(文・鈴木淳史)


 神奈川県相模原市は2004年4月に、住民から道路に関する破損などの通報を受ける「相模原市道路情報通報システム」を稼働させた。このシステムの最大の特徴は、携帯電話による通報を前提にしていることだ。携帯電話に組み込んであるデジタルカメラで破損状況を写してもらい、そのまま携帯電話でインターネットに接続し、場所や破損状態などの情報も送信してもらう。

 携帯電話による通報システムを導入したのには事情がある。相模原市では、道路や交通標識などの破損に関する通報が、年間に7000~8000件もあるのだ。相模原市には、東京近郊の主要環状道路である国道16号線と、神奈川県を縦断する国道129号線が走り、交通の便が良い。加えて工業や商業が盛んなため、交通量が多くそれに伴い破損も多い。

 「相模原市が管理する市道は約1640kmあります。市の面積(90.41平方km)に対して管理する道路の長さは他の自治体に比べて長い。さらに市街地が多いため、パトロールをしても道路や標識の破損が見つけにくい状況にあります」と、相模原市土木部土木計画課土木システム推進室主査の佐藤勝広氏は説明する。「住民の方が、道路の破損などを見つけた時に、その場で携帯電話を使って通報できれば、後から通報しようと思って忘れてしまうことも少なくなるでしょう」(佐藤主査)と、続けた。

■事前に破損状況を把握し迅速に対応

 相模原市では、通報された内容に市の対応状況なども加え、図のようにリスト化して把握している。通報日時や場所、破損内容、撮影画像、対応部署、補修の対応状況が一覧できる。図は、実際の通報の一部を例示したものだ(通報場所と担当部署は伏せ字に加工してある)。

 通報システムの導入効果は既に現れている。市の土木部が、道路などの破損の補修を迅速にできるようになったのだ。携帯電話から送られてきた画像や破損具合の報告から、ある程度の状況を把握できるようになり、すぐに補修に向かえるようになった。従来からの電話やファクシミリなどによる通報では、土木部の職員が一度、現場へ下見に行き、帰庁してから補修用具を準備し、再び補修現場に向かっていた。通報システムによって、下見に一度往復する手間と時間を大幅に省けるようになったのだ。

 佐藤主査は、「例えば、道路に開いた穴の補修では、約2時間で完了したケースがあります。14時20分に通報を受けてから、16時30分には補修を終えました。一回下見のために往復すると、こう短時間では対処できません」と説明する。他の部署との連携に役立つ場合もある。例えば、マンホールは水道やガス、電話などの用途によって担当する部署が異なる。「通報システムで受け取った画像を見て水道局のマンホールだと分かったことがありました。この場合は、現場には行かずに、土木部から水道局に対処を依頼したわけです」(佐藤主査)。

通報日時
通報場所
通報内容
受信画像
対応部署、
状況
1
3月16日(火)
午後0時24分
”****” 道路にタイヤがある 道路にタイヤがある ****課
対応中
2
3月16日(火)
午後0時53分
”****” ガードレール破損 ガードレール破損 ****課
3/16 修繕指示済
3
3月17日(水)
午後2時50分
”****” 放置自転車 放置自転車 ****課
4
3月17日(水)
午後3時28分
”****” 道路高架下に落書 道路高架下に落書 ****課
****に対応連絡済
5
3月17日(水)
午後3時28分
”****” 標識破損 標識破損 ****課
****課に対応依頼済
「****」は編集部による伏せ字処理。