■赤字バス路線の廃止に伴い、石川県志雄町では昨年3月、町内の交通体系をデマンド交通サービス(予約制乗り合いタクシー)と町営の巡回バスの二本立てに切り替えた。予約受付や走行ルート決定の効率化のためにCTIとGISを組み合わせたシステムを導入した。新しい交通体系のスタートから約1年半。町での活用状況をレポートする。(文・茂木俊輔=フリーライター)


 相次ぐ赤字路線バスの廃止、高齢者などいわゆる「交通弱者」の救済、不便地域の解消——独自に“地域の足”を確保する必要に迫られている市町村は多い。

 コミュニティバスや、その発展形のデマンドバス(予約すると通常ルートからう回するバス)などと共に注目されているのが、デマンド交通システムだ。一言で言えば、予約制の乗り合いタクシーである。既にいくつかの自治体が導入しており、今回紹介する石川県志雄町のほか、福島県小高町、千葉県酒々井町、広島県大和町などでは、CTI(Computer Telephony Integration)とGIS(Geographic Information System)による配車システムを用いて業務の効率化を図っている。

■利用者の8割は高齢者 行き先は病院、商店など

 さっそく志雄町で導入した「デマンド交通サービス」の例を見てみよう。デマンド交通サービスを利用するのは、もっぱら高齢者だ。2003年度の利用状況を年代別でみると、70代以上の町民で全体の8割強を占めている。行き先別でみると、最も多いのは病院で、次に商店、公共施設と続く。

 タクシーとはいえ、料金は町内なら300円均一。一般のタクシーに比べればケタ違いに安い。高齢者にとっては、無料だったバスに比べれば高いが、“日常の足”代わりに使える金額ではある。

■デマンド交通サービス利用の流れ
デマンド交通サービスの流れ
小型車 ジャンボタクシー
運行している車両は、小型車(4人乗り)2台と、ジャンボタクシー(8人乗り)1台の計3台。

 デマンド交通サービスは、町からの委託を受けた地元のタクシー会社、敷浪タクシーが運行業務を行っている。車両は敷浪タクシーが保有するジャンボタクシー(8人乗り)1台と小型タクシー(4人乗り)2台の計3台。町内を三つの地区に分けて、各地区に1台ずつ割り当てる。各車両は、担当する地区内を朝8時から午後3時過ぎまで約30分間隔で、「時刻表」に基づいて走り回る。「時刻表」というのは、地区ごとに「上り」「下り」の便数を決めたものだ。集落から町の中心部に向かうのが「上り」。町の中心部から集落に向かう便を「下り」と呼ぶ。朝は「上り」を、昼前後は「下り」を多めに設定している。