■先行事例に学ぶ ~福島県小高町商工会~
運行データの不断の見直しで収益改善を目指す
全国に先駆けて2001年6月からデマンド交通サービス「おだかe-まちタクシー」の運行を開始した福島県小高町(当初は試験運行)。
小高町商工会が中心となり、「地元商店街活性化=商店街に高齢者を呼び寄せる」という目的を持ってスタートさせたこともあり、デマンド交通サービスの運営にも様々な工夫を凝らしている。
この8月30日からは、幼稚園から帰る園児の帰宅利用もできるようにした。町内には町立幼稚園が4カ所あるものの、送迎バスは走らせていない。商工会で保護者を対象にアンケート調査をかけたところ、一定の需要を見込めることが分かった。
ちょうど商工会でも、午後の便をどう埋めるか、頭を悩ませていた。午前の便は医療機関に向かう高齢者を中心に高い利用率を上げているのに対して、午後の便は運行開始以来、苦戦してきたからだ。幼稚園からの帰りは平日の午後2時。“固定客”として迎えるには、もってこいの時間帯だったのだ。
■多彩な顔ぶれの運行委員会
こうした新しい“市場開拓”や事業の見直し・改善に向けた検討を図る場として、商工会では運行委員会を運営している。開催は原則として月1回。運行業務を受託するタクシー会社や地元の福祉団体・婦人団体の関係者など、顔ぶれは多彩だ。「いろいろな立場の委員がいるので、物事を多角的に見てもらうことができる」と小高町商工会の青田邦彦氏は説明する。
委員会で見直しや改善を図るとき、運行データは重要な手掛かりとなる。日々の運行状況はおのずと蓄積されていくので、改めて集計したり整理したりする必要はない。運行委員会ではデータを基に、これまでにも幾度か運行内容を見直したことがある。
試験運行を始めた当初、「病院に行きたい」との要望を受けて、土曜の午前中もタクシーを走らせることにした時期がある。ところが、目標としていた50人の線まで利用が達しなかったことから、途中で取り止めを決めた。
■データを基に運行委員会が見直し・改善を図る |
独自の工夫の一つ、「おもいやりカード」。病院や商店でこれを差し出して、電話予約の手続きを代行してもらう。耳の遠い高齢者でもこれなら出先から予約できる。町内の高齢者から意見・要望を聞く機会を設けたとき出てきたアイデアを基にした。 |
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車体には有料で広告を掲載。マグネット式のプレートで取り付ける仕組みだ。 |
運行時間も見直した。午前8時から午後5時までだったのを、午後は4時までに切り上げるようにした。
「事業」である以上、不断の見直し・改善は欠かせない。そのときに、運行データを蓄積し、瞬時に取り出せるという運行管理システムの機能が生きてくるのだ。