「EAに対する取組み状況のご紹介」
富士通 コンサルティング事業本部 シニアコンサルタント
中川弘文 氏

コンサルティング事業本部 シニアマネジングコンサルタント
公共コンサルティング担当部長
河合正人 氏


中川弘文 氏

中川弘文 氏

  富士通の中川弘文氏は、まず「今なぜEAが注目されているのか?」という点からセッションを開始した。中川氏は、EAへの注目の背景には、情報技術の利用拡大に伴い、全体最適(組織全体で情報システムを効率よく構築・活用すること)の必要性が重要になったと分析。今までのニーズ先行による、部署ごとの個別最適によって開発したバラバラなシステム群によって、「TCO上昇」、「ベンダー依存」といった弊害がクローズアップされてきたことを指摘した。

 それをふまえ、現在の重点課題として、
  1. 中長期的な戦略に基づく業務・システムの構築
  2.  
  3. 調達プロセスの改善
  4.  
  5. 知識資産の共有による組織力の向上
 の3点を提示。そして、これらの課題解決に有効なのが、EAであるという考えを示した。

 中川氏は「EAは言葉としては新しいが、従来の開発方法論と大きくは変わらない」としながらも、従来と異なる4つの特徴を、
  1. 組織での政策や業務手順と、情報システムに関わる「垂直的な関係」の可視化
  2.  
  3. 現状から次期モデルまたは理想目標に至る「時系列的」なプロセスの可視化
  4.  
  5. 汎用性および網羅性が高い
  6.  
  7. ITに詳しくない経営者やユーザー部門でも理解しやすい記述である
  と説明した。

 

出典:富士通


 続いて河合正人氏が、業務改革の検討事例を紹介した。

 河合氏はまず、経済産業省EAパイロットプロジェクト委員がまとめた『EA策定ガイドライン』を引用し、EAの役割として、

  1. 組織全体のビジョンを明確化して、システムの方向性を定める
  2. 現状から理想に至る活動の明確化と改善サイクルの確立
  3. データ体系の明確化
  4. 長期的な設計思想と技術の世代管理
という4点を示した。

現状では財務/文書/人事などの部署で、それぞれ専用端末でバラバラにシステム構築や業務処理を行っている場合が多い。だがEAで実現する「理想目標に向けた考え方」として、各業務共通のシステム基盤を構築し、庁内ネットワーク上のパソコンでデータを共有し業務を処理できることを代表例として紹介した。

河合正人 氏
河合正人 氏
   またEAの課題解決についてグラフで示した。縦軸に「複数のマネジメントシステムで同一事業の重複管理」、「事業の優先度の設定は、トップの判断にゆだねるしかない」などの“主要な課題”を書き出す。横軸には「事業情報の一元管理によるマネジメントの効率化」、「行政評価への市民ニーズ反映」といった"課題解決のテーマを配し、それぞれの相関が強いものを○、非常に強いものを◎といった評価をすることで、視覚的に分析が可能になる方法を一例として提示した。


 

出典:富士通



さらに河合氏は、「現状の問題点」を洗い出し、「変革のためのプロセス」を作成し、「変革後の効果」を測定する一連の流れとなっているアクションプランの設定例も紹介した。結果として、組織全体のビジョンを再確認できることがEAの持つ効果である点を強調し、セッションを締めくくった。