「自治体におけるオープン化の現状と方法論~ 『共通基盤』を中心としたオープン・スタンダードの最新動向」
サン・マイクロシステムズ
e-Japan 営業開発本部 本部長 中村彰二朗 氏

中村彰二朗 氏
  中村彰二朗 氏
 サン・マイクロシステムズの中村彰二朗氏は、8県の知事や有識者など参加する「地方分権研究会」の議論に1年半参加した成果を基に講演すると始めに断りを入れた。

 中村氏は、日本のIT環境の実態として、
  1. IT投資額は米国に次いで世界第2位
  2. ブロードバンド品質と低コスト化は世界第1位


  3. というプラス要素を挙げた上で、逆にマイナスの側面として、
  4. 電子政府進捗度は、国連調査で18位
  5. レガシーシステムへのIT投資が膨大
  6. 高度IT人材を、アジア・インドなどへ求める傾向がある
  といった点を挙げ、「米国の3倍、ヨーロッパの2倍もレガシーシステムが残っていること。それに伴う保守・運用費用がIT投資総額の中で大きな割合を占めていること。さらに、Javaなどのオープン・スタンダードの分野でエンジニアが育っていないこと」を指摘した。

 これらの問題点をふまえ、中村氏は「何のためにオープン化するのか」というテーマを中心にセッションを展開した。オープン化とは「規格などの標準化では協力する一方で、実装部分(システム構築案件)で競争する」ことをベースとしていると説明。ハードウエアやOSなどプラットフォームの分野で、さまざまな選択権ができる点を強調した。

 オープン化により「特定のベンダーへの依存状態に陥っている随意契約から、戦略的複数年契約への変化」、「大手ベンダーへの依存体質を排除し、中小/地場のソフトハウスの参入機会増」、「TCO(情報システムの総所有コスト)の削減によるコスト構造改革」などが推進できるとした。

 EA実現のアプローチとして、フロント(窓口業務)系システムの開発方法論について言及。部署ごとの縦割り中心の個別最適によるシステム構築を「従来型」と位置付け、同じようなシステムが重複していることを示した。重複投資を解決するためにEAを導入することが必要だと主張。

 EAの「データ体系」、「適用処理体系」、「技術体系」をあわせて共通基盤とし、共通アプリケーションなどを組み込んだ基盤の上に、各業務アプリケーションを乗せた形の開発モデルを提示。推奨事例として、地方分権研究会の共通基盤システム概念図を挙げた。

 
出典:サン・マイクロシステムズ



 
出典:サン・マイクロシステムズ

 このモデルの採用により
  1. 市町村合併時に容易に統合が可能になる
  2. システムの追加変更が容易である
  3. 開発レイヤー別にモデルを並行開発できるため、開発スケジュールを短縮できる
  といった利点を挙げ、TCO削減を実現できる、変化に対応可能な構築方法論であることを説明した。

 続けてEA採用の分岐点として、ブラックボックス(あるベンダー特定の仕様が公開されていないハードやソフト)の存在を挙げた。

 ブラックボックスをどうするかという点に関しては、
  1. アウトソースする
  2. パッケージを採用する
  3. 自ら構築し所有する
  という3つのパターンがあるとしたが、丸投げ的なアウトソースでは、ブラックボックス化の原因となると説明。中村氏としては(3)+(1)、すなわち「自らシステムを構築し、それをアウトソースする」という方法が最適であるという考えを示した。

 中村氏は、Javaプラットフォームによるオープン化を推進するため、サン・マイクロシステムズが自治体と協力して人材育成のテクノロジーセンターを設置していく計画も示し、セッションを締めくくった。