EAの動向と活用のアプローチ
ビジネスソリューション事業部 電子行政コンサルティング部 部長
前田みゆき 氏
前田みゆき 氏 |
前田氏は「都市計画」になぞらえてEAを説明した。都市計画では、まず観光都市にするのか産業都市にするのかというビジョンを決め、地域ごとの用途を定めたり、必要なサービスや企画を決めたりという設計図を元に町並みや発展を管理していく…という流れが、EAに共通する考え方であるとした。
■EAは3つの構成要素から成り立つ
続いてEAの構成要素として、「アーキテクチャ・モデル」、「プリンシプルズ」、「プロセス」の3つを提示した。「アーキテクチャ・モデル」には、
- BA(Business Architecture)=政策・業務体系、
- DA(Data Architecture)=データ体系、
- AA(Application Architecture)=適用処理体系、
- TA(Technology Architecture)=技術体系
出典:日立製作所 |
「プリンシプルズ」とは、原理原則、基準のこと。都市計画でいえば、どんな都市を目指すのかという都市設計のビジョンに相当する。「プロセス」は、基準をメンテナンスして評価することであり、都市計画では、設計図を元に町並みや発展を管理していくことであるとした(編集部注:「アーキテクチャ・モデル」は、さしずめ「プリンシプルズ」と「プロセス」に基づいた道路や水道など社会インフラの整備やサービス提供に当たるといえるだろう)。
前田氏はEAの概要を示したうえで「自治体におけるEA活用のアプローチ」を説明した。都道府県のCIOの役割とは「地域全体の視点でIT活用による住民サービスを向上させること」とし、その手法の一つとしてEAの理解と活用が必要であると主張した。
そのアプローチを「ガバナンス(経営)」×「システム構築(執行)」と、「自団体」×「地域」という2つの軸を基準に、
- 自団体のガバナンス→全体最適でのEAプロセス確立
- 自団体のシステム構築→全体最適でのEAモデル確立
- 地域のシステム構築→地域内での共同利用推進
- 地域のガバナンス→地域内での重複投資の排除
出典:日立製作所 |
(1)では知事およびそれに準じた役職者が取り仕切る「バリューマネジメント(戦略に基づくIT投資の予測や中長期視点での投資適正化など)」。加えて、CIOが取りまとめる「プログラムマネジメント(関連する複数プロジェクトのマネジメントや継続的な知識蓄積など)」を、具体的な要素として挙げた。
次いで、(2)では、EAの体系・モデルに即した新規システムの一貫構築や、現行システム体系の整理・評価などが、具体的な業務であるとした。
(3)では、近隣自治体との情報システムの共同利用推進を見据えた「システム基盤」と説明。EAにおける下位アーキテクチャ(AA/TA)を、共同利用を実現するのに欠かせない標準化要素と位置づけた。
業務システムの共同化にも言及した。共同利用での相互利益が大きいフロントオフィス(窓口業務のシステム)を例に、EAが利点を図示化してわかりやすく説明するための手法であると評価。一方、各団体での差異が大きいバックオフィス(基幹業務システム)の共同利用については、特定の業務に限定されるという見通しを語った。団体間での差異が少ない庶務事務などや、新規制度や今後にシステム化が、進みそうな分野の例だ。
(4)は、電子申請などの新規投資が必要な場合、複数の自治体でコストシェアするために、システムの技術的要件を参加自治体で共有するできるEAが効果的であるとの見解を示した。
前田氏は、「住民視点のサービス提供」の整理枠としてEAが重要であると結論付けた。最後にEA推進上の課題として、「都道府県CIOのリーダーシップ」、「現場とのコミュニケーション」、「都道府県間相互(さらには国を超えた)での情報交換、協力体制の確立」などを提示し、セッションを締めくくった。