基調講演 2
ワシントン州におけるEAへの取組み事例

米国ワシントン州CIO  スチュアート・マッキー氏

スチュアート・マッキー氏
  スチュアート・マッキー氏
 「ワシントン州のEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)とは?」と聞かれたら「我々が大胆な行動をとるための統一プラン」──マッキー氏は冒頭でまずこう語った。

そして、EAのメリットをいくつか列挙した。「重複投資の排除」「効率の向上」は言うに及ばず、「テクノロジーと戦略目標を合致させることができること」、そして、「データや情報の交換の改善」と指摘した。

「テクノロジーのために投資するのではない。投資がきちんと戦略目標と合致していなくてはならない」「情報を的確にオーガナイズできれば、住民サービス向上だけでなく、よりよい意志決定のためのマネジメント情報として役に立つ」──マッキー氏はEAがマネジメントのための戦略ツールであることを強調した。

続けてマッキー氏はITを取り巻く状況とEAについて説明を加えた。ITは金融から健康・福祉まであらゆる領域で活用されており、今後は、業務の相互依存が高まってゆく。それをマネジメントするITリーダシップの重要性は増してゆく。先に説明したEAのメリットは「ITリーダシップの信頼性を向上させることに結びつく」(マッキー氏)というわけである。

次に、マッキー氏はワシントン州のEAの取り組みについて語った。「市民中心」「TCO(総所有コスト)」「共通性」という同州のEAの3つの指針を示し「EAは将来に向けてのことを行っている。目的をきちんと持って始めるべき。単にお金(の節約)だけが目的ではない」とした。

「市民中心」という指針に沿って、同州では既に州政府と市民がWebでやり取りをする際にシングルサインオンを確立しているという。「TCO」については、州政府独自の総所有コストの最小限化や方法論の開発の必要性を示した。ただし「共通性」の部分については州内でも議論がまとっていない。「可能な限り標準を作り一貫性を持たせるのが望ましいが、州の多くの機関は一貫性を求めない」(マッキー氏)と、組織横断的に統一した基準を作ることの難しさをうかがわせた。  

最後にマッキー氏は、EAを推進するCIO(最高情報責任者)の在り方についての持論を語り、講演を締めくくった。「技術が問題を解決するのではなく、解決するのは我々人間である。技術に詳しいだけではリーダーとはなり得ない。CIOはビジネスの素養・才能も必要だ」(マッキー氏)。