EA、ITILなど米国の最新動向を吸収
米国調査団(2004年2月1日~7日)報告

岐阜県の知地氏、鳥取県の大西氏、福岡県の溝江氏
写真左から岐阜県の知地氏、鳥取県の大西氏、福岡県の溝江氏

 米国ではどのような形でEAが展開されているのか──今回の春季会合の時期に合わせ、都道府県CIOフォーラムでは米国視察を行った。参加者は岐阜県知事公室参事情報化推進担当の知地孚昌氏、鳥取県総務部行政経営推進課課長補佐の大西重任氏、福岡県企画振興部高度情報政策課情報企画監の溝江言彦氏の3人。

 2月1日から7日にかけて、米国の首都、ワシントンDCを訪問、米国行政予算管理局(OMB)の視察、同時期に開催されていたITIL(ITインフラストラクチャ・ライブラリ)に関するカンファレンス「itSMF USA GOVERNMENT」への出席など、精力的にスケジュールを消化した。

 視察団は、OMBの政府調達ポリシー室調達ポリシーアナリストのデビッド・ムツィオ氏と会見した。EAの適用を要件に含んだ各省庁に対する調達指示書(Circular A-11)や、各省庁の予算に対する実績を赤・黄・青の3色で公表するスコアカード「The Stoplight Scoring System」の運用状況についてレクチャーを受けた。さらに、現在手掛けている最中の、政府全体としてのソフトウエアライセンス調達について話を聞いた。

■柔軟な取り組み姿勢にヒント

 「itSMF USA GOVERNMENT」は、ITILのユーザー団体、itSMF USAが主催するカンファレンスで、政府/地方政府向けのものは初開催だという。

 ITILとは、英国政府が1980年代末に策定したガイドラインで、事実上の国際標準となっている。システム運用業務プロセスの整備やベストプラクティスの利用などによってITサービスのレベルを改善・維持していこうというものだ。近年、米国の政府/地方政府でも導入例が出てきた。トップダウンで策定されたEAを、現場レベルで実践するツールとしても注目されつつある。

 カンファレンスでは、米国の地方政府の事例を中心に聴講した。「ITILを活用して、ERP導入、Webホスティングなどを行いながら20%の人員削減を実現したオクラホマ州のやり方は、日本の自治体でも参考になりそうだ」(岐阜県の知地氏)、「特に印象に残ったのがミシガン州の事例。ITILのそのままの活用は無理と考え、“ライトITIL”さらには“ウルトラ・ライトITIL”を実状に合わせて作成していた。柔軟な姿勢は参考になる」(鳥取県の大西氏)と、それぞれ収穫を口にした。

 福岡県の溝江氏は「実は、2年前に米国での電子政府関連のフォーラムに出席したが、その際は9.11のこともありセキュリティ保持が最大の関心事だった。しかし、今回は『いかにして今までの成果を共有するか』という点を中心に議論されており、成熟度では1段階、2段階ステップアップしている」と米国の取り組みの印象を語った。