電子行政

電子自治体ポータル

日経BPガバメントテクノロジー

自治体のデータセンター利用は共同発注から

津田氏写真

津田邦和(つだ・くにかず)

ASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパン常務理事兼技術部会長/リコー SP事業センターASPグループリーダー

1954年札幌市生まれ。1978年に電気通信大学を卒業後、リコーに入社。1999年にASPICジャパンの設立に参加し現在常務理事。総務省「公共ITのアウトソーシングに関するガイドライン研究会」の事務取りまとめや、東京都昭島市IT化3カ年コンサルプロジェクトなどを手がける。このほかの自治体でも委員や顧問に多数就任し活躍している。

 2004年10月23日に発生した新潟県中越地震では、震度7前後を計測した。現在使われているビルなどの建物で、震度7までの十分な耐震性を確保して建築したものは少ないと言える。自治体の庁舎もその例外ではない。自治体は情報システムの設置場所や運用方法を見直してみてはどうだろうか。

 現状では、耐震や防火などの対策を施した自治体所有の建物がないならば、防災設備の整ったデータセンターへ、コンピュータ機器を移設することが最適解だろう。

 ただし、単にコンピュータ機器をデータセンターに移すのでは、データセンターの利用料などが純増してしまう。データセンターへの移設の検討に際しては、同時に近隣自治体と情報システム運用の共同利用アウトソーシング(外部委託)も推進し、費用の圧縮にも努めるべきだ。

■業務や画面の統一は後からでもできる

 共同利用アウトソーシングの推進に当たっての最大の問題は、業務プロセスや入力項目の画面構成(記入様式など)を複数自治体で協議して統一する過程だ。この過程に大変時間が掛かるため、共同化が実現するころにはITの技術標準が変化し、結果として利用したい機能が陳腐化するなどして、最適な価格対効果を得られない恐れがある。

 そこで、当面は業務プロセスや画面構成などの統一は後回しにして、各自治体が個別のアプリケーションの仕様を作成して共同発注を実施し、共同でデータセンターへのホスティング(データセンター事業者が用意した機器やサービスを利用すること)を取り組み始めることを提案したい。

 つまり、業務アプリケーションには基本的に同一ベンダー同一製品を発注し、参加自治体の業務に則して個別にカスタマイズ(部分改修)する。その一方で、データセンター設備やネットワーク機器、セキュリティ機能を制御するサーバー、監視ツールとそれに関連する業務などは共同ホスティングを活用する。これらの「共同発注・共同ホスティング」により、データセンターを効率的に利用でき、情報システム担当者も少人数で済む。これら全体のシステム開発や運用などを共同で発注することで、費用面を含めてよりよい情報システムのセキュリティと防災のための体制を作り上げることができる。

 業務プロセスなどの統一については、次期システムへの改修時期までにじっくり話を詰める。それまでにシステム・ベンダーもどのように運用方法を改善した方が良いかを把握できる。次期システムの改修時にも公平な競争入札を実施したい場合は、自治体の情報システム担当者でも十分理解できる仕様書(業務の処理プロセスやシステム構成などを表したもの)や関連ドキュメント(書類)をベンダーに作成させて改修時に公表するよう契約しておけば良い。

■共同発注・共同ホスティングの領域イメージ図(ASPICジャパン)
共同発注・共同ホスティングの領域イメージ図

 この方法ならば、各自治体の業務プロセスが細かく異なるために共同化が難しいと言われている税務や財務会計、福祉などの、いわゆる基幹系システムでも多くの部分を共同化しやすいと考えられる。全国の自治体で耐用年数を迎えつつあるレガシー・システム(あるメーカー1社が利用する独自仕様のハード/ソフトで構築されたコンピュータ・システム)からオープン・システムへ移行するといった流れでも活用できると考えられる。

 この時には、さらに業務プロセスの統一だけでなく、複数自治体が協力しての情報セキュリティの強化や、住民サービスを充実させるための業務アプリケーションの共同開発なども断行すべきだ。

 NPO法人「ASPインダストリ・コンソーシアム(ASPIC)ジャパン」では、自治体からの相談を受け、既に多数の地域で上記の方式によるシステム共同化の調査研究を開始している。本年度中にはコスト削減額や効果を公表できるのではと考えている。ASPICではこうした取り組みによりデータセンターや、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ。アプリケーションを、ネットを通じて従量貸しするサービス事業者)の活用によるIT環境の共同化推進の一助となりたいと考えている。(談)

 [2005/01/27]

この記事に対する読者コメント

コメントに関する諸注意 コメント投稿 コメント一覧