|
|
続・IP電話の夜明け前(8)市場対応に大忙し(2000年8月〜2001年春)
IP-PBXへのPHS収容が一段落し、収容すべきものは一通り収容できるようになった。IPネットワークに音声を通す時代がようやく到来しようとしていた。 2000年8月。基本的な仕組みの開発が完了し、技術的には一つの到達点まで来たと感じた。企業のネットワークについては、フルIPネットワークで音声通信するソリューションが揃ったことになり、一応の達成感を感じていた。 この年、IP-PBX「IPstage」は先進的なお客様にご評価いただき出荷されていった(図1)。品質については自信を持って送り出していたのであるが、予期しないトラブルも少なからずあった。そのため、次への改良に向けた開発とともに、並行してフィールド・フォローを行うことになり、極めて忙しくなった。このときにご迷惑をおかけしたお客さまには、あらためてお詫び申し上げたい。
お客様からは「なにも、そこまでフルIPにこだわらなくても」との声も聞かれたのも事実である。しかし、ここは譲れないポイントであった。なぜ、フルIPだったのか。 IPに統合することによってインフラ・コストを下げるという信念に迷いはなかった。目先のビジネスだけを優先するならば、そこへの投資はなかったと思うが、音声は必ずIPネットワークに巻き取られる。そこでは、情報の中に音声が融合することで、より便利で豊かな社会が来ると信じていた。インフラ・コストを下げるだけでなく、音声をデータに融合することによる付加価値が必ず出てくると踏んでいたのだ。 私自身がそうだっただけではなく、会社全体もそのような方向感覚を持っていたはずだ。そしてそのビジョンは間違っていなかったと思う。当初私たちが描いていたシナリオ通り、企業のオフィスは、一人に1台のベースでパソコンが普及するとともにメールを利用した業務スタイルが定着し、LANの環境が整っていった。LANスイッチのポート単価は劇的に下がり、音声がデータ・ネットワーク上に巻き取られていくトレンドに疑いの余地はなかった。 しかし、ビジネスにおけるビジョンと現実は簡単に直結するものではない。どれほど「それが正しい」と私たちが信じていても、お客様に価値をお届けするまでのプロセスのどの部分で綻びがあったとしたら普及へのサイクルは回っていかない。そのことを痛感させられた。先駆的に開発して製品化したものの市場を開拓するには、まず最初にその道筋を付ける必要があるということである。このIPstageの普及への道筋ができるまでに、開発、営業、SE、ディーラ、工事、保守者など関係各方面の血のにじむような苦労があったこと、そして、結果としてこの未知の商品を受け入れていただいたお客様のご理解とご支援があったことを申し添えておきたい。
|