総務大臣の諮問機関である情報通信審議会(情通審)は7月25日,通信制度について話し合う電気通信事業部会を開催した。今回は電話サービスを広くあまねく提供するための制度「ユニバーサルサービス基金」について,情通審側の答申案が提示された。

 ユニバーサルサービス基金については昨年末から11回,専門の委員会で議論が重ねられた。総務省は今回の答申案を元に,パブリックコメントで意見を募集する。その結果を反映した上で,2006年度から新しいユニバーサルサービス基金の制度を導入する見通しとなった。2008年度までの3年間が期限とされている。

 ユニバーサルサービス基金は,広くあまねく提供する義務を負う電話サービスに対して,サービス維持のための資金を補てんするためのもの。現在も基金の制度自体はあるものの,発動しにくい条件となっていた。これに対して,今回の答申案では,1回線当たりのコストが高い加入電話の回線に対して無条件で赤字分を補てんすることにした。

 2003年度のデータによる試算では,1回線当たりのコストが月額4080円以上となる,上位4.9%の回線が対象となる。4.9%を決めるに当たっては,平均費用から標準偏差で2倍という統計的な手法を用いた。コストで上位4.9%を占める回線全体の平均費用は月額6222円で,全国平均の2.57倍になるという。この妥当性の裏付けとして,日本テレコムが「直収電話サービスの提供を予定しない地域の人口カバー率は6%」と発言していることや,既に基金制度を導入している米国やフランスの例を提示している。

 補てんで必要となる費用額については,2006年度の算出対象で110億~170億円と推計された。これを全国の加入電話だけでなく,ISDNや携帯電話,IP電話など電話番号を持つ電話サービスの番号数の割合で負担する。現在利用されている電話番号は約1億6000万。つまり1番号当たり70~100円程度の負担となりそうだ。仮に100円とすれば,家族4人それぞれが携帯電話を保有し加入電話とIP電話をそれぞれ1回線持っている場合で,年間600円となる。

 補てん金は今のところ,ユーザーが負担する方向で議論が進められているが,具体的な課金方法までは決まっていない。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション