首都圏新都市鉄道,インテル,NTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)の3社は7月14日,8月24日に開業する「つくばエクスプレス」車内で公衆無線LANサービスを提供すると発表した。車内に無線LANアクセス・ポイント(AP)を設置し,乗客にインターネット接続サービスを提供する。停車時だけではなく,走行中でも通信が途切れないサービスを目指す。当初は実験として始めるが「早い段階で商用化する」(NTTBPの小林忠男社長)。

 つくばエクスプレスは東京・秋葉原と茨城県つくば市を最速45分でつなぐ鉄道。58.3kmの区間に20の駅がある。学術研究都市であるつくば市とパソコン・ショップが多い秋葉原を結ぶ鉄道には,無線LANの利用者が多いと見て実験に乗り出した。

 APは,6両編成の車両のうち先頭と最後尾および中間の計3車両に取り付け,1台のAPでそれぞれ2両分をカバー。車内の利用者へはIEEE 802.11bの無線LAN接続を提供する。また,車両間のLANケーブル配線を不要にするため,中間車両のAPは先端/最後尾車両のAPとIEEE 802.11aの無線LANで接続する。さらに,AP間の通信を安定させるために,無線LANを高速化させるMIMO(multiple input multiple output)技術を適用する。

 車内と車外との中継にも無線LANを使う。各駅および線路沿いにAPと指向性アンテナを設置し,先端車両と最後尾車両のAPと通信する。車内と車外の中継に使用するのはIEEE 802.11bまたは802.11g。指向性アンテナを採用したのは,駅間の距離が短い場所では駅にAPを設置するだけで公衆無線LANの「線的カバー」を可能にするためだという。

 走行中でも途切れずに通信を継続させるために,モバイルIP技術を使ったAP間の高速ハンドオーバーに対応する。NTTBPの眞部利裕サービス開発部長は,「実効速度で数Mビット/秒を目指す」としている。

 ただし,開業の8月24日時点で設置する中継用APは9駅のみ。このため,当初は車内で無線LANを利用できる区間は限られる。その後,順次APを設置する駅を増やし,2005年度内には全駅・全線で公衆無線LANによるインターネット接続サービスを提供する予定だ(写真)。

 実験終了後は,NTT東日本の公衆無線LANサービス「フレッツスポット」やNTTドコモの公衆無線LANサービス「Mzone」などを通して,商用サービスを提供する計画である。

(武部 健一=日経コミュニケーション