FMC実証実験は愛・地球広場で開催した。

 京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は,「愛・地球博」の会場内でKDDIが開発したモバイル端末「愛・MATE」を使った移動体通信と固定通信の融合「FMC」(fixed mobile convergence)の実証実験を実施した(写真上)。

 今回KCCSが実験したのは,(1)1x EV-DOと無線LAN上でのシームレスなIP電話,(2)IEEE 802.11bの無線LANのマルチホップIP電話──の二つ。いずれも無線LANアクセス・ポイントには愛・MATE端末を利用した(写真中)。

 (1)は,無線LANエリア内では無線LANで通話し,エリア外になると自動的に1x EV-DOに切り替わるというのもの。(2)のマルチホップIP電話とは,複数の無線LANアクセス・ポイント(愛・MATE)間でハンドオーバーして通話を継続する。通信事業者の携帯電話網に別途,基地局を追加してアドホック通信を実現する。


KDDIが万博用に開発した「愛・MATE」(左)。同端末は基地局としても使える(右)。

 実際に端末を持って通話をしてみると,(1)では多少の遅延を感じるとともに無線LANから1x EV-DOに切り替わる際にプツプツという音が発生した。一方,(2)は(1)よりもスムーズに切り替わった印象だ。

 KCCSはシームレスなハンドオーバーを実現するために,ミドルウエア「DIORAMA」(開発コード)を独自に開発した。KCCSの経営企画室研究部IT応用研究課の宮広栄一氏は,「異なるメディア間では,シームレスなハンドオーバーを実現するのが難しい。今回は時間が限られていたが,チューニングにもう少し時間をかければ音質はさらに向上する」と言う。

 基地局や利用者の位置情報などは,KDDIの1x EV-DO網側に設置した管理サーバーで把握する。今回は管理画面の基地局と端末に,愛・地球博の公式キャラクターである「モリゾー」と「キッコロ」をそれぞれ見立てた(写真下)。


管理ソフト画面。公式キャラクターのモリゾーが基地局,キッコロが端末を表す。

 KDDIは,6月15日に固定網と携帯網を融合した新IP網を構築する「ウルトラ3G構想」を発表したばかり。さらに1x EV-DO上でのIP電話は,今回が初めての試みとなる。KDDIは「今回の実験はあくまでKCCSが主体。すぐに当社のビジネスにつながる話ではない」としているが,今後の可能性を多いに感じさせられる実験だったことは間違いない。

(山根 小雪=日経コミュニケーション