総務省は7月11日,第3世代(3G)携帯電話サービス用の新周波数割り当てに関する免許方針案へのパブリック・コメントを公表した。新規参入を狙うソフトバンクBBやイー・アクセスのほか,既存の携帯電話事業者など29の法人・団体・個人が意見を提出。少しでも有利に事業を始めたい「新規参入事業者」と,現行サービスへの影響を極力抑えたい「既存事業者」の思惑の対立が,改めて浮き彫りになった。

 免許方針案は,(1)1.7GHz帯(上り1.7500G~1.7850GHz,下り1.8449G~1.8799GHzの計70MHz)と(2)2GHz帯(2.010G~2.025GHzの計15MHz)の二つの周波数帯における割り当て基準を示した。

 (1)の方針案では,全国エリアで利用できる1.7GHz帯の15MHz幅を新規事業者に最大2社,それぞれ5MHz幅ずつ割り当てる。これに対して新規参入を目指すソフトバンクBBは,「5MHz幅の割り当てでは既存事業者と同等のサービスは提供できない」として,当初から周波数の割り当て幅を10MHz幅とするよう要望を出した。イー・アクセスも「データ通信の規格を最大限に活用するためには10MHz幅の割り当てが望ましい」として周波数の拡張を希望した。

 また両社は早期のサービス展開のために,「既存事業者とのローミングや設備共用などのルール化も検討すべき」という意見も提出した。

 これに対して既存の携帯事業者からは,新規参入事業者をけん制する意見が相次いだ。NTTドコモは「自らリスクを負って早期に設備投資を行い,自らの設備で全国をサービスを提供することが当然の責務」とし,ローミングや設備共用についての2社の要望を一蹴。ボーダフォンは新規事業者を最大2社とする案について,「過剰な競争は必ずしも消費者に便益をもたらすとは限らず,新規参入事業者は当面の間,最大1社に限定することが望ましい」と意見した。

 さらにKDDIは,新規参入事業者の事業継続性についてチェックする仕組みが必要との考えを示し,「周波数割り当て後の経営形態の変更,事業譲渡などについてどう考えるかを明確にしていただきたい」との意見を提出した。

 一方,(2)の2GHz帯は,総務省の方針案では新規参入事業者1社に対し,15MHz幅すべてを割り当てる。この帯域はベンチャー企業のアイピーモバイルが割り当てを希望しており,同社は方針案を全面的に支持した。

 同帯域への参入をうかがうウィルコムは,「2GHz帯は3Gシステムに限らず,新しい通信方式も対象の範囲とすべき」との意見を提出。「次世代PHSシステム実現の参入機会を与えてほしい」と要望した。
 
 総務省は今後,意見に対する考え方をまとめ,割り当てに向けた手続きを進める。早ければ8月にも免許方針が確定し,年内には割り当て事業者が決定する見込みである。