NECは7月11日,同社のインターネット接続サービス「BIGLOBE」で迷惑メール対策基盤「SMBA(Spam Mail Blocking Architecture)」を構築したと発表。また7月中旬から,BIGLOBEのメール・サーバーを使わず直接メールを送信する行為に対し,一度に送信できるメールの量を制限する仕組み「SMBA-FC(Flow Control)」を投入することを明らかにした。

 SMBA-FCは,動的IPを使うユーザーを対象に実施し,8月の頭には全国展開を完了する。これで迷惑メールを「届けない,通さない,出させない」の三つの施策が実現。BIGLOBEの古関義幸・パーソナル事業部長(写真)は,「一通りの迷惑メール対策基盤が完成した」と説明した。

 古関事業部長は「6月から無料で提供している『迷惑メールブロックサービス』のデータを分析すると,メールの約4割が迷惑メール」と解説した。また,迷惑メールを短時間に大量に発信されると,通信事業者にとってもメール・サーバーの負荷増大に伴う自動的な受信拒否と,メール遅延が発生するといった影響が出るという。

 これまでBIGLOBEは,迷惑メールを「通さない」対策として2004年9月から存在し得ないドメインから送られてきたメールを削除している。さらに2005年6月からは,「届けない」対策として会員に向け「迷惑メールブロックサービス」を提供。「送らせない」対策にも乗り出しており,2004年6月にBIGLOBEのメール・サーバーを介したメールの大量送信を制限している。これで,BIGLOBEのメール・サーバーを使った大量送信は「ゼロになったと思っている」(古関事業部長)ほどの効果があった。

 古関事業部長は,BIGLOBEから送信されるメールの9割が,BIGLOBEのメール・サーバーを介さない直接送信だとし「ほとんどが迷惑メール送信業者によるもの」と見る。BIGLOBEパーソナル事業部の田中栄市郎氏も「迷惑メール送信者は,専用のメール・ソフトを使って大量に同時接続をして迷惑メールを送り,IPアドレスを短時間で変えたりする」と解説する。ゾンビPCも迷惑メールの送信に使われるが,その数は迷惑メール送信者による送信に比べると少ないという。

 こうした直接送信への対抗策として,メールの送信に使うTCPの25番ポートをブロックしてしまう「Outbound port 25 blocking」と呼ばれる対抗策を実施するプロバイダが今年に入って登場している。しかしこれにより,プロバイダのメール・サーバーを使う場合は従来通り25番ポートを利用できるが,「自営のメール・サーバーを持つ企業などが送ったメールが届かなくなる」(古関事業部長)。

 そこでBIGLOBEが考案した新手法がSMBA-FCである。その仕組みは,25番ポートを流れる通信の流量を制限するもの。通常のメール送信では,一回の接続で指定できるあて先が決まっている。そのため,迷惑メール送信者は多数のSMTPコネクションを張り,一気に大量のメールを送信しようとする。そこで同一IPアドレスからのコネクション数を制限することで,短時間で大量に迷惑メールを送ることができなくなる。これにより迷惑メール送信をあきらめさせるのがBIGLOBEの狙いだ。

 またBIGLOBEは7月から,ポート25ブロッキングを実施しているほかのプロバイダのユーザー向けに,ポート587(submissionポート)の使用に対応したことも明らかにした。

(山崎 洋一=日経コミュニケーション