総務大臣の諮問機関である情報通信審議会(情通審)は7月5日,電話を全国あまねく提供するための制度「ユニバーサル・サービス」について話し合う「ユニバーサルサービス委員会」を開催した。今年9回目となる今回の会合では,総務省側が答申案を提示。1回線当たりのコストで上位4.9%を占める回線を対象に,「ユニバーサル・サービス基金」を発動する方針が明らかになった。

 委員会でNTT東西地域会社の収容局ごとに電話サービスのコスト構造を分析したところ,加入者回線ごとの平均コストは局ごとに大きく異なり,低人口密度地域のコストが極端に高いことが分かった。そこで,この高コスト地域を対象に基金を発動しよういう考え方だ。答申案では,1回線当たりの月額費用と加入者回線数の関係を対数正規分布で近似。統計的に決めることで恣意(しい)性が入るのではないかという懸念を払しょくするために標準偏差(σ)を用いた。

 この結果から,高コスト地域を2σ(1回線当たりのコストが4080円)以上の4.9%の地域を競争事業者が参入を見合わせる高コスト地域と特定し,基金で補てんすべきだとした。この4.9%の数値については,委員会が実施したヒアリングで日本テレコムが「直収電話サービスの提供を予定しない地域の人口カバー率は6%」と説明したことなど,複数の例を挙げて妥当性を説明した。

 なお,1回線当たりのコストで上位4.9%に当たる電話サービスを提供している収容局数は,全体の43.0%に当たる3075局。これらの局の1回線当たりの平均コストは6222円となり,全国平均の2.57倍に上る。

 また基金の負担方法については,各事業者が電話サービスの提供に使っている電話番号数に基づくことになりそうだ。答申案では総売上高ベースなど複数の方法が列記されたが,公平性を考えると電話番号単位が適性という意見が委員から出されたことから,次回会合で提示される最終的な答申案では,電話番号単位で負担する方法が望ましいとの記述が盛り込まれる可能性が高い。

 総務省側が提示した答申案に対して,委員から大きな反対意見が出なかったことから,1週間後に予定していた次回会合は中止し,7月20日に最終確認する。その後,情報通信審議会電気通信事業部会で検討され,パブリック・コメントが募集される見通しだ。

 委員を務める神奈川大学経営学部の関口博正助教授は,「説得力のある答申に仕上がってきた。流れとしてはゴー・サインが出たと思っていい」と会合後にコメントした。

(山根 小雪=日経コミュニケーション