KDDIは6月29日,モバイル版WiMAX「IEEE 802.16e」の実験局免許を取得し,移動環境における無線伝送実験に成功したと発表した。伝送実験の成功を受け,7月からは性能評価を目的とした実証実験を開始する。ただし「現時点で商用化の予定はない」(KDDI)。

 実験を実施した場所は大阪府の中心部で,利用した周波数は2GHz帯。機器メーカーは非公開とする。7月からの実証実験では,100台以上のPCカード端末などの移動局を用いて,移動環境での性能を検証。第3世代携帯電話システムのデータ通信を補完する無線方式となるか評価を進める。

 WiMAXは数k~数十km程度のエリアをカバーし,数十Mビット/秒での通信が可能な次世代無線通信システム。固定用途とモバイル用途で二つの規格があり,KDDIが実験中のIEEE 802.16eは,モバイル用途向けの規格である。最高時速120kmの移動環境でも,安定した通信が可能な点が特徴だ。ただし標準化は完了していない。採用技術はほぼ決まりつつあるが,正式な標準化は2005年秋の予定だ。

 なおKDDIは,6月24日に総務省が開催した「ワイヤレスブロードバンド推進研究会」において,「PIMS」(Portable Internet Multimedia System)と呼ぶシステムを提案している。パソコンや携帯電話端末,組み込み端末などでの高速・低価格・常時接続を実現する移動通信システムだ。KDDIは「今回実験したIEEE 802.16eは,PIMSを実現する有力技術となりうる」としている。