「携帯電話だけではなく,無線LANや放送など様々な無線技術の競合が始まっている。これからは複数の無線技術の統合が携帯電話機の開発の上でもポイントとなる」――。6月16日に都内で開催されたノキア・ジャパン主催のセミナーで,ノキア・チャイナのヤリ・バーリオ技術担当取締役(写真)は今後の携帯電話の方向性をこう語った。

 バーリオ取締役は,利用距離が0.1m程度の無線ICタグ,1mから10mのBluetooth,10mから100mの無線LAN,10km以上の範囲のDVB-H(欧州のデジタル・テレビ放送規格「DVB-T」の携帯向けサブセット)などを挙げ,携帯電話がこれらにアクセスできる端末に向かっているとした。

 既に携帯電話との融合が始まっているものとして,テレビ端末の例と近接無線技術の例を挙げた。前者は欧州や日本の一部で開始されたデジタル・テレビ放送。欧州でもDVB-Hが現在テスト・フェーズに入っており,「放送の一部は通信の世界に入りつつある」とした。

 後者の例がNFC(near field communication)。NFCとは例えば13.56MHzの周波数を使用して数センチの距離で通信をするソニーの「FeliCa」などが挙げられる。既に日本では,携帯電話機との融合が進んでいる。今後,これが世界的なトレンドになるとした。

 なおノキアは2004年にソニーおよびオランダのロイヤル フィリップス エレクトロニクス(フィリップス)とともに近距離無線通信技術の互換性などを図る「NFCフォーラム」を立ち上げている。FeliCaと同様の技術であるフィリップスの「MIFARE」は「既に互換性がある」(バーリオ取締役)。

(大谷 晃司=日経コミュニケーション