総務省は6月14日,電力線通信(PLC:power line communication)の実用化を目指す「高速電力線搬送通信に関する研究会」の第6回会合を開催した。高速電力線通信では,2M~30MHzの高周波数帯を利用する。この周波数帯はアマチュア無線や短波放送など他の無線が利用しているため,干渉問題が懸念されている。

 これまでの5回の会合では,実用化を推進する電機メーカーや電力会社と,実用化に懸念を抱くアマチュア無線連盟や短波放送を提供する日経ラジオ社などで,ことごとく意見がぶつかってきた。水掛け論に近いやり取りが議論の大部分を占める印象すらあった。会合も6回目となり,当初の予定通りに10月に方向性を固められるのか,疑問を呈する声が漏れ始めていた。

 これまでの会合では,技術者ではない構成員は議論の進行をじっと見守る形になっていた。技術基準を検討する研究会という位置付けから,詳細な技術論を話し合う場面が多いからだ。だが今回の会合では,これまで発言を控えていた構成員が一斉に口火を切った。

 日本経済団体連合会の小海裕氏は,「規制を厳しくしすぎて使い物にならないのでは意味がない。ある程度の通信速度を出せて,かつ他の人に迷惑をかけない落としどころを探るべきだ」と発言。続いて関西電力の藤野隆雄氏も,「情報家電に関する技術は日本が世界のトップ。その情報家電に使う技術こそ国産の技術であるべきで,過度に厳しい規制はいかがなものか」と追撃した。

 座長を務める東北大学電気通信研究所の杉浦行教授は,「10年は使える許容値を決めたいと思っている」と発言。電力線通信の実用化を認めても,技術的に厳しい規制が付いて電力線通信が使いずらいものになるという“骨抜き説”をけん制した。

 業界関係者からは「すでに利用者のいる周波数帯を新たに使おうとしている以上,技術論だけでは決まらない部分がどうしても出てくる。国民全体の利益を考えて,どういった考え方をベースに議論を進めるのかをはっきりさせてほしい」という声も聞こえている。議論に残された時間はわずかだ。

(山根 小雪=日経コミュニケーション