オンラインで顧客情報管理サービスを提供する米セールスフォース・ドットコムは6月13日,KDDIの携帯電話機「au」向けにASP(application service provider)サービス「salesforce.com Mobile Edition for au」を提供すると発表した。現在パソコン向けに提供しているASPサービス「salesforce.com」とリアルタイムに連携する。KDDIがサービス開発で全面的に協力。2社共同でサービスを提供する。月額利用料は,1ライセンス当たり9450円から。サービス開始は8月1日。当初は無料とし10月1日から有料化する。

 salesforce.com Mobile Edition for auは,au端末で動作するBREW(binary runtime environment for wireless)の専用アプリケーションを使って提供する。ユーザーはBREWの専用アプリを起動し,インターネット経由でサーバーに接続する。携帯電話機には,サーバーに蓄積した1カ月先までのスケジュール,各自が進めている商談の情報,関連する取引先情報がダウンロードされる。携帯電話機でスケジュールや商談の進捗情報を更新し,データの同期処理を実行すると,サーバーと携帯電話機で最新のデータを保持する仕組み。

 KDDIはこれまで都市部の大企業を中心に法人営業を展開してきた。今回セールスフォース・ドットコムと共同でサービスを展開することで,地方都市や中小企業にすそ野を広げたい考え。初期投資や運用負荷を省けるASPサービスを用意して,中小企業でも携帯電話を使ったシステムを導入しやすくした。

 今回KDDIがサービス開発で協力した部分は,携帯電話機と業務サーバーのインタフェース。これまで業務アプリケーション・サーバーと携帯電話を連携させるには,携帯電話機の処理性能やデータの表示性能に合わせてコンテンツを変換するゲートウエイが不可欠だった。ゲートウエイはユーザーが個別に用意する必要があり,初期費用や運用費用を省きたい中小企業では導入が難しかった。

 そこでKDDIは,ゲートウエイを不要にできる仕組みを開発した。具体的には,データをSOAP(simple object access protocol)でやり取りできるミドルウエアを開発し,BREWアプリに組み込んだ。この結果,サーバーと携帯電話機がゲートウエイなしにデータをやり取りできるようになった。KDDIは今後,SOAPのインタフェースを他のソフト開発ベンダーなどにも公開していく考え。

(加藤 慶信=日経コミュニケーション