カナダ最大の通信事業者であるベル・カナダが2006年中にコア・ネットワークをフルIP化した次世代IPバックボーンを完成させる計画を明らかにした(写真上)。「2006年時点では,すべてのトラフィックが新IPバックボーンを流れるようになる」(ベル・カナダ エンタープライズ・グループのイサベル・カウヴィル・プレジデント,写真下)。

 ベル・カナダでは加入電話のトラフィックも,新IPバックボーンに流す計画。欧州やアジアに続いて北米でも加入電話網のIP化を打ち出す通信事業者が現れたことになる。ベル・カナダは固定通信や携帯電話事業で,約2700万のユーザーを抱えている。

 法人向けの専用線やフレーム・リレー,ATM(非同期転送モード)などのサービスは,新IPバックボーンが完成した時点で提供を終了する。古いシステムやネットワークは順次廃棄し,法人向けデータ通信サービスを広域イーサネットとIP-VPN(仮想閉域網)に集約する。「100近くある“レガシー系”サービスを終了することで,約1万台に上るネットワーク機器が必要なくなり,2006年時点で10億~15億カナダドル(概算で850億~1300億円程度)のコスト削減効果がある」(カウヴィル・プレジデント)という。

 新IPバックボーンは,「2年前に構築を決断した」(カウヴィル・プレジデント)。総額6億~8億カナダドル(概算で500億~700億円程度)を投資する予定で,米シスコシステムズの次世代IPネットワーク構築のコンセプト「IP NGN」(next generation network)に沿った製品群やソリューションを導入することになっている。

 一般消費者向けの加入電話は,ネット接続とIP電話,放送の3点セット「トリプルプレイ」で巻き取りながらIP化への移行を進める。ただし,既存の交換機ベースの加入電話網がいつ完全に必要なくなるかについては明言していない。「光ファイバによる広帯域化が必要で,トリプルプレイのようにサービスをバンドルしながらIP化する。一般消費者向けサービスは,一気にIP化する法人向けサービスとは移行の手順が異なる」(カウヴィル・プレジデント)。2006年以降もしばらくは,新IPバックボーンと加入電話網の併用が続くことを示唆した。

 ブロードバンドについては,交換局とユーザー宅の途中のノードまで光ファイバ化し,その先はDSL(digital subscriber line)を使うFTTN(fiber to the node)方式を予定する。これは,米SBCコミュニケーションズと同じ方式。「国土が広いという地理的な条件とコストを考えると,各家庭まで光ファイバを引き込めない。1ノード当たり,50ユーザー程度を収容できるようにする」(カウヴィル・プレジデント)。

(宗像 誠之=日経コミュニケーション,トロント発)