高速電力線通信推進協議会(PLC-J)と日本アマチュア無線連盟(JARL)は6月6日~8日の3日間,茨城県鹿島郡波崎町の実験サイトで実証実験を実施している。今回の実験は,現在総務省が進めている電力線通信(PLC:power line communication)の実用化を目指す「高速電力線搬送通信に関する研究会」の作業の一部という位置づけである。

 高速電力線通信では,2M~30MHzの周波数帯を利用する。この周波数帯はアマチュア無線や短波放送など他の無線が利用しているため,干渉が懸念されている。研究会では実用化を推進する電機メーカーや電力会社と,実用化に懸念を抱くアマチュア無線連盟や短波放送を提供する日経ラジオ社などで意見がぶつかっている。

 今回の実証実験は,電力線通信が利用を想定している短波帯の特性を調べるもので,シミュレーション結果が実測値と合っているかどうかを確認するのに使う。電力線通信で信号を流す屋内の電灯線の配線は,非常に複雑で多くのパターンがある。すべてのパターンの実験を実施して電力線から漏れ出す電磁波を測定するのは難しいため,電界強度をシミュレーションする見通しだ。シュミレーション結果は,電力線通信から各無線通信への許容値を決める材料となる。
 
 実験ではドームの中に仮設の配電線を用意した(写真上)。配電線に擬似的な信号を送り,配電線からの距離が10mと30mの地点で電界強度を測定する(写真中,下)。また,測定に使う受信アンテナの高さを1~10mに変化させ,垂直方向での電界強度の変化を測定した。これまでPLC-Jが提示してきたデータが水平方向での距離による漏えいの変化を測定したものだったため,アマチュア無線連盟などが「短波帯の特性を考えると垂直方向の距離によるデータも必要」と訴えていた。

 実験結果は「解析が間に合えば6月14日に開催予定の次回会合で報告する」(PLC-J)方針である。

(山根 小雪=日経コミュニケーション