「日本では,ADSL(asymmetric digital subscriber line)がもはやブロードバンドにふさわしくない時代になった。映像を上り下り双方向でストレスなく流せる光回線こそが日本のブロードバンド。ユーザー数も右肩上がり」――。NTT東日本の古賀哲夫常務取締役が,日本の“光先進国ぶり”を聴衆や他のパネル参加者に向かってアピールした。横浜みなとみらいで開催中の国際イベント「BROADBAND WORLD FORUM(BWF)ASIA」のセッション,「The Business of Broadband:Success Strategies and Imperatives」でのひとこまだ。

 セッションに参加したのは,通信機器メーカーの独シーメンス・コミュニケーションズ,KDDI,NTT東日本,フランス・テレコム,米SBCコミュニケーションズ。シーメンス・コミュニケーションズのクリスチャン・ウンターバーガー固定ネットワーク担当プレジデントがホスト役を務め,通信事業者で構成するパネリストたちが,各国で展開しているブロードバンド・サービスを紹介した。

 フランスなどがADSLをブロードバンドの中心に据えるのに対し,古賀常務は「これだけ映像アプリケーションが増えてくるとADSLでは帯域不足」と言い切った。「もはやADSLがブロードバンドにふさわしくない」理由として,「日本では,ピーク時に月間30万~50万回線も増加していたADSLが,2004年9月時点では19万回線の純増まで落ちた。直近のNTT東日本単体の実績から推定すると,今は月間7~8万程度。もうすぐ減少に転じてADSLの時代が終わる」と説明。

 一方,光回線の販売は好調なようで,「光回線はかなり右肩上がり。ついに先週末,NTT東日本の光回線ユーザーが100万を突破した」と明らかにした。NTTグループは2004年11月に発表した中期経営戦略で,「2010年までに3000万ユーザーを光アクセスに移行させる」と宣言しているが,古賀常務は「夢物語ではなく,かなり可能性が高まっている」と胸を張った。

 他国では,米SBCコミュニケーションズが光ファイバを使ったサービスの展開を明らかにした。「Project Lightspeed」という名称で,ブロードバンドにIP電話,放送サービスを合わせたトリプルプレイを提供する。(1)NTT東日本と同じように宅内まで光回線を引き込む方式(FTTP=fiber to the premises)と,(2)ユーザー宅の近くまでは光回線を使い,最後の引き込みにVDSLを使う方式(FTTN=fiber to the node)を使い分けて光化を展開する予定だという。40億~60億ドルを投資し,3年以内に1800万ユーザー獲得を狙う。

(宗像 誠之=日経コミュニケーション