半導体の製造装置や検査装置の商社であるノアは3月から,無償のIP電話ソフト「Skype」を社内の内線電話代わりに利用している。同社の福田千昭・管理本部・総務・人事・貿易管理マネージャーに,導入の狙いを聞いた(写真)。

──Skype導入の経緯を教えて欲しい。

 Skypeを知ったのは,もともと個人的に興味があったからだ。ちょうど昨年末ころに,テレビのニュース報道でSkypeを知った。その後,なかなか使う機会がなかったが,使ってみると音質もなかなか良い。社内の内線電話代わりにも利用できるのではと考え,3月から15人程度で使ってみた。

 その後,1カ月程度利用してみたが,トラブルもないので,社内の内線電話用に利用することを決めた。社内公認のソフトにするために,稟議(りんぎ)書を作成して役員の承認も得た。現在は,全社員66人のうち38人が利用している。

 実際に導入する際には,手作りのインストール・マニュアルを作成した。各自のアカウントはエクセルに登録し,共有サーバーに置いている。これを参照しながら,各ユーザーが関係者を登録していく仕組みにした。通話のためのハンドセットは,各自で購入して事後精算してもらっている。

──Skype導入のメリットはどの程度あるのか。

 何といっても通信費の削減だ。具体的なコスト削減効果はあと数カ月してから試算する考えだが,地域拠点の通話料や国際電話の削減を期待している。当社の通話料は多いときで月80万円。この通信費をかなり減らせると見ている。

 国内には,横浜,熊本,福岡,大阪に拠点がある。これらの拠点間の内線代わりに利用している。従来は加入電話を利用していたが,Skypeを使うことで通話料がかからなくなった。

 もう一つ通信費の削減で期待しているのは,海外メーカーとの連絡。当社は,海外の半導体装置の買い付けなどで米国やイスラエルのメーカーとの連絡が多い。営業担当者も海外に頻繁に出張することから,国際電話の通信費の比重が高い。海外メーカーとの電話会議などを実施する際は,30分で3万円程度の通信費がかかる。こうした費用がSkypeを利用すれば大幅に削減できる。現在,取引先メーカーにもSkypeを利用してもらえるように伝えている。

──通信費削減以外のメリットはあるのか。

 プレゼンス情報も重宝している。特に営業系の人は,常時接続環境になった瞬間に連絡がとれるので効率がいい。

 ただし通信費が削減できる半面,システム管理者として見ると気がかりな点もある。それはファイル送信機能。Skypeは,ファイルを暗号化して送信する機能を持っており,TCPの80番ポートを利用して通信するため,当社ファイアウォールでは事実上止められない。情報漏えいの観点からリスクもある。この点は情報管理を徹底して,運用面で整備していこうと考えている。