NTT持ち株会社は4月26日,NTT研究所が開発した個人情報漏えい対策システム「ストレージ・セントリック・セキュリティ・システム」を発表した。同システムはデータ・センターに設置したストレージに保存・管理するデータやアプリケーションをクライアント・パソコンから利用できるもの。クライアントにデータを残さないので,個人情報などの漏えいを防止できる。

 ストレージ・セントリック・セキュリティ・システムでは,NTT研究所が開発した「ストレージ・セントリック・ネットワーク技術」を利用する。同技術はクライアント・パソコンから,リモートのストレージに記録したOSをブートさせ,ディスク領域のマウントを実現する。OSのWindows XPや各種アプリケーションをネットワーク経由で,遠隔地のストレージから起動できる。

 クライアントとデータ・センターのストレージは,「iSCSI」を使って,LANまたはWAN経由で接続する。iSCSIはディスクの読み書きなどで利用するSCSIコマンドをIPネットワーク経由でやり取りするプロトコル。パソコンからはリモートのディスクをローカルと同様に操作できる。

 クライアントとストレージが物理的に大きく離れていても動作に問題はないという。「ストレージを東京に置いて,クライアントを大阪に置いても,普通に使える」(NTT持ち株会社の影井良貴サイバーセキュリティプロジェクト・チーフプロデューサ)。

 NTT持ち株会社は同システムを東京・千代田区にある本社ビルに導入し,自社でも利用する。従来のセキュリティ管理やデータのバックアップなどに要していた手間が大幅に減るので,クライアント管理のコストを50%削減できるとしている。

 NTT持ち株会社では,2005年度内にNTTグループを通して同システムの商用化も予定。当初は,同システムの構築ソリューションを提供するが,「将来は中小企業を対象に,データ・センターからクライアントへOSやアプリケーションを提供するネットワーク・サービスも検討している」(影井チーフプロデューサ)とする。

(武部 健一=日経コミュニケーション