総務省は4月26日,2004年度の通信サービスの競争評価案について発表した。同省は2003年度から通信事業者のサービスについて,市場の分類と分析・評価に取り組んでいる。

 2004年度は評価の対象に「移動体通信」と「IP電話」を新たに追加した。移動体通信には,携帯電話,PHSや無線LANのアクセス・サービスが含まれる。中でもソフトバンク・グループなど新規事業者の参入議論が進む携帯電話が注目される。

 競争評価案では,携帯電話の接続料に踏み込んで言及した。接続料は他事業者が別の事業者の電話網を使う際の料金。電話サービスの原価とも言える。固定電話は市内交換局で3分5.32円であるのに対し,携帯電話は区域内の通話で3分34.74円を支払う必要がある(NTTドコモのFOMA通話モードの場合)。

 ただし総務省が問題視しているのは,接続料の絶対額ではなく数年間の推移である。過去3年間,世界の携帯事業者が接続料を平均16%引き下げているのに対し,NTTドコモ・グループは9%の引き下げに留まっていると指摘している。そして「携帯電話の接続料は他事業者の合意が前提のため値上げは生じにくいが,値下げするインセンティブも働いていない」とし「下方硬直的である」と結論付けた。また,「複数の事業者での市場支配力が行使される懸念がある」とも述べている。

 このほか今後の政策として「周波数の希少性という制約はあるが,ネットワークのインフラ層への参入機会をできるだけ多数かつ多様に確保する」との考えも示した。新規に周波数を獲得しての参入だけでなく,既存事業者のネットワークを借りて参入するMVNO(仮想移動体通信事業者)を促進する狙いがあると見られる。

 総務省は6月1日までパブリック・コメントで意見を募集。6月中に開催する公開の場での議論を経て,2004年度の競争評価案を確定する。評価案の結果は政策に直結するわけではないが,規制の強化や緩和の重要な検討材料となる。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション