総務大臣の諮問機関である情報通信審議会(情通審)は4月26日,電気通信事業部会を開催。NTT東西地域会社と他事業者との接続契約の課題について議論した。

 注目されるのは,東西NTT以外の事業者が光ファイバを自前で敷設する政策を初めて具体化したこと。対象となるのは,ユーザー宅の最寄りの電柱からユーザー宅内までの引込み用光ファイバ(写真)。伝送速度1Gビット/秒の光回線を複数ユーザーで共有するFTTH技術の「GE-PON」への適用を想定している。この政策を促進するため,総務省は東西NTTへ電柱の利用条件の見直しを迫った。

 総務省側が東西NTTに求めたのは,(1)手続きの簡素化,(2)電柱上に新たな光ファイバの敷設場所の提供,(3)東西NTTの既存のケーブルと他事業者のケーブルをまとめる「一束化」の促進,--の大きく3点。今回,東西NTTがこれらの要求に対して総務省に回答した結果が公表された。従来に比べて,具体性があり踏み込んだ内容となっている。一方で他事業者は電柱の強度計算を簡素化することを求めている。

 「東西NTTと他事業者はまだ一致していない」(総務省総合通信基盤局料金サービス課の鈴木茂樹課長)が,今後の展開は早い。5月に東西NTTと他の通信事業者,電力会社を集めて検討会を開催。6月中に関係する事業者間で合意することを目指している。そして早ければ今夏にもNTT東西以外による自前の敷設作業が試行される見通しだ。

 総務省の今回の取り組みは,東西NTTから設備を借りる「サービス競争」から自前で設備を敷設する「設備競争」への政策転換を図ったものといえる。事業者の自由度は上がるが,体力のない事業者は生き残りが難しくなる側面もある。「競争が進んだ」として,東西NTTの光ファイバ開放義務が一部撤廃される可能性もある。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション